Ethereumに特化したソフトウェア開発・投資を行うコンセンシス(ConsenSys)のフィリップ・マトブ氏に、Ethereumのステーキングついてお話をいただきました。
フィリップ・マトブ(コンセンシス:ベンチャーアーキテクト)
インタビュー日 : 2020年3月26日
ステーキングとは
現在、Ethereumはプルーフ・オブ・ワーク (Proof-of-Work)と呼ばれる合意アルゴリズムでトランザクションが行われています。トークンの送受信を可能にするルールは、この合意アルゴリズムによって定義されています。Bitcoinにも同じ様なプロトコルが使用されており、トランザクションが行われるたびに、検証のための複雑な数学アルゴリズムを解く競争が様々なマイナーの間で起こります。このアプローチの問題点は、エネルギー効率が非常に悪いことであり、望むほどのスケーラビリティ(拡張性)はありません。
Ethereum 2.0では、代わりにステーキング(Staking)と呼ばれる合意メカニズムが提供されます。Ethereumの所有者であれば、システムの保護とトランザクションの検証のため、そのEthereumをステーク(預入)することができます。ステーキングのメリットは、システムを支えるためのEthereumの預入によって報酬が得られるということです。ステーキングが利用できるようになると、Ethereumで利子を得ることができるようになります。取引所、カストディアン、投資ファンド、そして一般の大口保有者にとっては、そこから利益を得る大きな機会となります。
ただし、ステーキングはそれほど簡単なものではありません。ステーキングには多くのリスクが伴い、それが正しく行われているかを確認するために適切なインフラが必要となります。ConsenSysが提供しているのソリューションの1つに、ETH 2.0のステーキングサービスがあります。ETH 2.0のリリース前に、取引所とカストディアンで既に試行実験を開始しており、技術的、機能的要件を満たしているかを確かめたいと考えています。今年の7月からはインフラを構築しなくてもステーキングが直ぐに始められるようにするため、非常に力を入れています。
データ分割「シャーディング」
「シャーディング」と呼ばれる方法があり、データ処理を高速で管理しやすくするため、データをシャード(Shard)と呼ばれる小さなパーツへと分けるデータベース分割を言います。情報を複数に分割することで全てのデータを調べる必要がなくなります。データベースをスケーリング(拡張)させる方法は、垂直分割と水平分割の2つがあります。例えば、「氏名」「住所」「ID」という個人情報を集めたデータベースがある場合、「氏名」と「住所」を1つのデータベースに置き、「ID」を別のデータベースに分ける方法を垂直分割と呼びます。もう一方の水平分割では、同じデータベースを「氏名」のアルファベット順に並べ、このアルファベットを基準として分割が行われます。このような水平分割の方法が、シャーディングと呼ばれます。これにより、よりデータが管理しやすくなり、簡単で高速なデータベースでEthereumの機能が使用できるようになります。
ブロックチェーンの金融サービス
私達は、大きなブロックチェーンのプロジェクトに依存するだけではなく、多くの製品も自分達で開発しています。インフラ、開発ツール、アプリケーションなどがあり、今の主力製品の1つにCodefiがあります。
DeFi(分散型金融)とは、借用、貸与、売買などの金融サービスの包括的な用語です。スマートコントラクトなどを使ったパブリック型の分散型ブロックチェーンに基づいて構築されており、レンディングサービス、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の提供などが含まれます。これは、非常に効率的に資産を管理するための代替法ですが、その可能性を十分に活用するためには、現在のように紙で集中管理されている金融商品や資産を分散台帳へと移行する中間のステップが必要となります。そのようなアナログからデジタルへの変換は、非常に多くの企業が必要に迫られているプロセスです。資産のトークン化、セキュリティトークン、ステーブルコインなどでファイナンス・トランスフォーメーション(Financial Transformation)が行われています。そして、ここで発生する資産の問題を解決するのがCodefiというプロダクトです。
FinTechの分野は、製造、ミドルオフィス、流通という3つの異なるレイヤーがあり、RobinhoodやRevolutなどのFinTech企業は、製品の流通段階において様々な問題に長い間取り組んできました。かなり昔からあるような同一の製品を、より魅力的な方法で、特に若い消費者に流通させることに成功しています。ミドルオフィスの部分においても効率が向上していて、積極的に取り組んでいる企業もあります。しかし、製造の部分に注力している企業はなく、金融システムの基盤は何十年も変化してきませんでした。そこで、業務プロセスを最適化し、資産と金融商品をデジタル化するために構築された金融、商業ためのオペレーティングシステム、Codefiが開発されました。
Codefi Assets(デジタルアセットの発行、流通、管理)、Codefi Networks(ETH 2.0のステーキング、レンディングのプロトコル等)、Codefi Payments(暗号通貨、ステーブルコイン決済)、Codefi Data(分析、管理、リスク分析)、これら4つが大きな柱となっています。これにより、Codefi Assetsを通じて資産を発行し、Codefi Paymentsで決済を管理するということが可能となります。
インタビュー・編集: Lina Kamada
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