ドイツの著名なエコノミスト、作家であるマーク・フリードリヒ氏にインタビューさせていただきました。第2回のインタビュー記事では、ドイツの銀行が新たな収益源として暗号通貨ビジネスを拡大させている現状について説明しています。是非、ご覧ください。
マーク・フリードリヒ
インタビュー日 : 2020年4月9日
ドイツの暗号通貨ビジネス
BaFin(ドイツ連邦金融監督庁)とは、銀行と金融サービスプロバイダー、保険会社、証券取引の監督をまとめて行う機関で、銀行や金融商品に関する法律を所管する全国委員会のようなものです。彼らが、銀行が暗号通貨を保管したり、取引できるようにする法律を通過させました。ドイツの全ての銀行は、必要に応じて暗号通貨の保管や取引を行うことが許可されています。さらに、ドイツには非常に強力な地方銀行があるので、彼らが暗号通貨を保管し、顧客に販売することで、新たな収益の流れが生まれてくると思います。これは、ドイツの暗号通貨界にとって大きな一歩です。他のビジネスがゆっくりと衰退していくことで、暗号通貨の保管と取引をサービスとして始める銀行がすぐに現れると思います。このような生き残り方が最も妥当であり、顧客にBitcoinを購入させ、安全に保管できるサービスを提供できた最初の銀行がこの競争で勝ち残り、次の銀行危機を乗り切ることでしょう。
銀行と政府に対しては非常に大きなプレッシャーがあり、人々がますますデジタルコインと接するようになるにつれて、何かを変えなければならないと彼らは理解し始めています。ユーロが崩壊することは彼らも知っていて、ドイツだけでなく中国、米国の他の銀行も崩壊してしまうでしょう。暗号通貨に関する法制化を行わなかった場合、国際経済市場での遅れをとり、私達ドイツは競争に負けることになってしまいます。彼らがルールを作ったのは、これが理由なのです。
銀行の新たな収益源
多くの銀行が収益の流れを失ってしまっているので、彼らは新しい収益源が必要だと主張しています。全てが安いネット銀行に人は流れていくので、地方銀行や大手銀行には新しい収益源が必要となります。そのような中で、この「暗号通貨というもの」の保管により手数料を徴収し、更には保険をかけることで、お金が稼げると考えるようになったと思います。保管している顧客の暗号通貨が紛失したり、ハッキングや銀行強盗に遭った場合、それを補償するための保険会社を設立する機会が生まれ、別の収益源となる可能性があります。オンラインウォレットや詐欺師に対処する方法について、皆が銀行でレクチャーを受ける必要はありません。実際に行くことのできる銀行、つまり仮想のウォレットだけではない銀行の方がはるかに安全であり、このようなサービスを最初に提供した銀行が最先端を進むことになると思います
ドイツの交換所
ドイツには、「Bitcoin.de」と呼ばれる非常に有名な暗号通貨取引所があり、ドイツ国内で取引を行う人々を中心に利用されています。彼らは2011年から12年にサービスを開始し、非常に活気があり長い間サービスを続けています。小さい交換所はいくつかありますが、Bitcoin.deはドイツで一番大きい取引所です。ここでは、Bitcoinやその他のコインを売買したり、プラットフォームにBitcoinを保管したりできます。この会社の顧客コインの98%はコールドウォレットにあり、ホットウォレットにあるのは2%だけです。たとえハッキングされたとしても、ハッカーはホットウォレットの中の2%のコインしか盗むことができません。他の業界と同様に、ハッキングは毎日のように試みられていますが、この会社ではハッキングが起こったことがありません。これは、取引所が市場でどのように安全性と勢いを保つかということを示す非常に良い例だと思います。また、ドイツには取引所がわずかしかないため、取引所を設立するチャンスもたくさんあります。
You Tubeでの情報発信
Youtuberは、人々と暗号通貨の市場に多大な影響を与えています。多くの人が毎日YouTubeから情報を得ています。私は自分のチャンネルで暗号通貨についての動画を作っていて、多くの方に気に入ってもらっています。テレグラムや他のウェブサイトから情報を入手する人もいます。もちろん、YouTubeにも、コインや資産を狙う詐欺師が多くいるので、注意しなければいけません。しかし、非常に良いコンテンツもあります。「Antonopoulos」「Tuur Demeester」「Bitgenstein’s Table」などを検索すると、素晴らしいポッドキャストが見つかると思います。彼らのポッドキャストでは、暗号通貨やマーケットについて非常に簡単な言葉で詳しい説明が行われています。
今、私はBitcoinに関する次の本を書いている最中です。私は、複雑な理論を普通の言葉に変換して理解させることに長けていると思います。例えば、通貨システムのお金がどのように機能しているかや、銀行口座に預けているお金が自分のものではなく、銀行のものであるということを皆さんに説明しています。人々が自分自身のお金、財産を守ることができるように、情報発信をしています。世の中には、非常に多くの素晴らしいコンテンツがありますが、非常にオタクっぽい内容も多いので、高齢者やBitcoinを理解したい学生のためにコンテンツを噛み砕いて説明しています。このエコシステムをもっと普及させ、暗号通貨の可能性について一般の人がもっと知る必要があると思います。
Bitcoinとの出会い
人気になった直近の本の中にも書いた話ですが、私が初めてBitcoinについて知ったのは、2011年に顧客から聞いたのがきっかけです。私は金融コンサルタントとして、それぞれの顧客に合わせた資産に関するプランを作成していましたが、その中の顧客から「ポートフォリオを多様化させる選択肢としてBitcoinはどう思うか」と尋ねられました。私は「そのインターネットのお金とは何か」と聞き返し、うまくいかないし、おそらく詐欺だから投資はしないように伝えました。その当時、1BTCが約5セント程度だったので、今の銀行での動きを考えると、少し冷たいアドバイスだったかもしれません。
その後、2冊目の本のための研究を行なっていた2013年に、通貨システムの代替案を探す中で、もう一度Bitcoinに出会いました。その時には、もう一度Bitcoinついて考えてみるべきだと思いました。「なぜこんなものが2年経っても、まだ残っているのか」「そこには何かがあるのではないか」と考え、サトシ・ナカモトのホワイトペーパーを印刷してみました。読み始めようと思いましたが、その時点ではまだ目を通しませんでした。しばらくして、1000人を前に行なった大きなプレゼンテーションから戻ったある日、興奮状態が続き眠れない時がありました。他のものを読む気になれず、ベッドテーブルにあったBitcoinのホワイトペーパーを手に取り、読み始めました。今度は本気でそれを読んでみました。それが、人生が変わり、目から鱗が落ちた瞬間でした。すぐに妻を起こして、「このBitcoinは本当に素晴らしい」と伝えました。翌日になってからBitcoinに投資を始め、英語とドイツ語で書かれた記事をできるだけたくさん読み始めました。それ以来、Bitcoinに熱中し続けています。
インタビュー・編集: Lina Kamada
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