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「ハイパーインフレの代償を払うのは国民」マーク・フリードリヒ氏 ③

ドイツの著名なエコノミスト、作家であるマーク・フリードリヒ氏にインタビューさせていただきました。最終回のインタビュー記事では、 経済破綻によってお金を失った体験やハイパーインフレが引き起こす結果について説明していただきました。是非、ご覧ください。

マーク・フリードリヒ

インタビュー日 : 2020年4月9日

Bitcoinのリンディ効果

私は2016年の末に、ドイツの有名雑誌でBitcoinに関するかなり長い記事を投稿し、次の年の経済予測を行いました。そこで私は、来年がBitcoinの年になると予測し、投資するべきであるという内容の記事を2016年の末に出しています。私が公にBitcoinを紹介したのは、それが初めてのことでしたが、自分のお客様に対しては2013年から既にBitcoinを紹介しており、投資を勧めていました。

2016年には、Bitcoinが消える心配はなくなったと思いました。これは、リンディ効果という概念を通じて説明することができます。リンディ効果とは、新しい技術が登場し一定の期間存在し続けると、その技術が消えることはなくなり、永久に存在し続けるというものです。私は、これまでに多くのBitcoinに関わる専門家と話し合い、Bitcoinという技術と発明は消えずに存在し続けるだろうという考えを聞いてきました。

2016年末に私が行った予測は、Bitcoinの価値は2倍になるというものでした。実際に、Bitcoinの価値は2016年の約600ユーロから、2017年には約1500ユーロ、つまり20000ドルとなり、それ以来、私は先生と呼ばれるようになりました。

もちろん、このようなBitcoinの価格上昇は健全ではなく、持続可能ではありません。しかし、時折起こる価格の急落を経験したときでも、私はBitcoinに対して疑いを持ったことはありません。私は数学的によって制約された資産に投資することが好ましいと考えていて、Bitcoinは数量に上限がある最初の資産でした。

Bitcoinに投資する場合は、数パーセントだけで十分だと思います。それだけであれば、価格が下落したとしても苦労はないですし、路上で生活する心配もなくなります。

これは、他の投資と同じように一種の賭けではありますが、これは世の中で今のところ最も可能性のある賭けだと思っています。法定通貨、そしてこの通貨システムが崩壊することを誰もが理解することでしょう。そして、システムを機能させ続けるには、数学によって制約を行う仕組みが必要です。

必死になって紙幣を印刷し続ける中央銀行と、数学のアルゴリズム、どちらがより信頼できるでしょうか。私は自分自身で決断を行っています。皆さんも、自分自身でそれぞれの決断をする必要があると思います。

暗号通貨は止められない

ある日、暗号通貨が今の現金のように物の購入などの取引に使用できる公の資産となるかもしれません。そして、そこで必要となる規制は、既に作られ始めています。

しかし、規制が多すぎると、この業界から根本思想も技術オタクの人達も消えて無くなってしまう恐れがあるので、非常に厳しい道となります。Bitcoin自体は規制されることなく、既に11年もの間、問題なく動き続けており、今後の150年の間も存在し続けると思います。

しかし、問題になっているのが規制を行う国と行わない国の戦いが常にあることです。例えば、ある国がBitcoinの取引を禁止したとしても、それは別の国に移動してしまうだけなのです。

中国で暗号通貨が禁止された時は、そのまま国境を飛び越えて韓国や日本に移動していきました。暗号通貨は、デジタルであり、かつ分散化されているため、これらを無くしてしまうことは不可能なのです。人々はそれを理解し始めており、いま行動を起こしています。

ハイパーインフレでお金を失う

暗号通貨に対して強い衝動と情熱を感じる理由は、私自身が2001年のアルゼンチンの経済破綻でお金を失ってしまったからだと思います。また、1919年から1933年のワイマール共和国時代に起こった大恐慌、ハイパーインフレなどで人々がどのようにしてお金を失ったかというドイツの歴史も勉強してきました。そのようなことについて、母や周りの人は何も話してくれませんでした。

これは私の単なる考えですが、小さいころからずっと世界をより良い場所にしたいと思ってきました。私は誰もが何かの役割を持って地球上に存在すると考えていて、人々を教育することこそが私の義務なのだと思います。弱い人が搾取され被害を被っていることが気に入らず、若い頃からずっとそのような人のために戦ってきました。私が情熱を感じている理由はここにあります。

経済崩壊の寸前

以前は、人々は額に汗してお金を稼いでいましたが、今日の若い世代はクレジットカードなどのデジタルマネーを使用しているため、お金の価値が実際に何であるかという感覚を失っていると思います。これは現実であり、私達が非常に多くのクレジットカードや他のプラスチックカードを持っているのは、感覚を失っていることが理由だと思います。

これらの企業は、人々が無駄遣いを続け、より多くのお金を使うことを望んでいます。システムを大きくしていくには借金が必要となり、より大きなお金の流れが必要となります。しかし、自分達の財産、財務記録について真剣に考えなければ、自分でコントロールすることができなくなってしまうと思います。クレジットカード、さらにはPayPalなどでは、購入がワンクリックで簡単にできますが、人々はその問題にも気付き初めています。

更に、Bitcoinの発行上限というのも非常に重要になってきます。2040年までに2100万BTCが発行され終わり、希少性によってこのコインには価値が残ります。これとは対照的に、通貨が無制限に数兆ドルも印刷され続けられた場合、その価値はなくなり、誰もそれを利用しなくなってしまいます。

何の裏付けもない状態で必死にお金を印刷している中央銀行がやっているのはハイパーインフレを起こすことに他ならないのです。気候変動やパンデミックウイルスに対処するために、お金を印刷し続けることはできず、このようなやり方は既に機能しなくなっています。

幸いなことに、人々は徐々にそれらを理解し始めています。私の「最大の崩壊:Biggest Crash」というタイトルの本が人気になったのも、間もなく経済の崩壊が起こり、スパイラルの入り口にいるという内容が現実だからです。これは非常に不幸な現実となるでしょう。

代償を払うのは国民

ジンバブエ、ベネズエラ、アルゼンチン、ドイツなど、この輪転機を利用しようとした全ての国が失敗してきました。日本も危機に陥ると考えています。日本の国債は対GDP比で約240%となっており、非常に大変な状態です。日本銀行のETF買入に関する最新の情報を目にしました。彼らは必死にお金を印刷し、国内のインデックスファンドの約50%を保有しています。彼らのバランスシートにある5.5兆ドルは大変な数字だと思っています。

これは、日本に限ったことではなく、ドイツなどの国も同様の状況にあり、アメリカが13兆ドルを超える債務を返済することは不可能です。彼らが実際にそれを返済することは決してありえないので、エンドゲームである金融のリセットがどんどん近づいていることは確かです。

残念ながら、誰かがそのツケを払わなければならず、それは私達国民の責任となります。政府が引き起こした混乱の代償を払わなければならないのは、政治家や政府、中央銀行ではなく、私達なのです。数か月または数年、遅くとも2023年までには崩壊が起こり、私達はそこから新しい通貨システムを考え出さなければならないでしょう。既に述べているように、現行の仕組みの中で解決策はありません。

このような混乱が起こっている間は、暗号通貨の価値は増加します。ボラティリティはありますが、私は暗号通貨の長期投資家であり信者なので、長期的にはより安定し、その価値は増加していくと考えています。全く違った価格になると予想していますが、これはあなた自身でリサーチを行う必要があります。

ある日、過去を振り返り、2020年は信じられないほど安かったと思う日が来るかもしれません。今が人生の中のチャンスなのかもしれませんが、私が完全に間違っている可能性もあります。なので、金融危機が発生するまでは、本当に何もわからないのです。

マーク・フリードリヒ Marc Friedrich

  

ドイツのベストセラー作家。エコノミスト、ファイナンシャルアドバイザーとして多くのセミナー、イベント等で講演を行う。金融の専門家であるマティアス・ウェイク氏と共に、これまで5冊の本を執筆し、人々の経済状態を分析。You Tubeのチャンネル登録者数は10万人を超える。

     

Marc Friedrich

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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