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「暗号通貨と芸術の融合」クリプトアーティスト:ヴェサ・キヴィネン氏(全インタビュー記事)

フィンランド出身でクリプト・アーティストとして活動するヴェサ・キヴィネン氏(Vesa Kivinen)にインタビューさせていただきました。ブロックチェーンを活用し、全く新しいタイプのアート作品を生み出すキヴィネン氏に「Art for Crypto」というアイデアについて説明していただきました。是非、ご覧ください。

ヴェサ・キヴィネン

インタビュー日 : 2020年5月11日

「クリプト・アート」とは、新しいタイプのデジタルアートであり、特定のブロックチェーンに存在する固有のトークンと関連付けられているものを指す。「デジタルの希少性」のという考え方が基になっており、このデジタルアートは物理的なアート作品のように購入、販売、取引することができる。BitcoinやEthereumなどの暗号通貨と同じように、クリプト・アート作品の数量は限定されており、希少性が存在する。

ヴェサ・キヴィネン氏(全インタビュー記事)

クリプト・アートの世界

私は、クリプト・アーティストのヴェサ・キヴィネンと申します。NewsBTCのライターとしても活躍しています。

「Art for Crypto」とは、暗号通貨と芸術・アートの領域で使われている言葉です。私がこの世界に入ったのは、フィンランドの通貨制度に関するドキュメンタリー映画の製作に携わっていたのがきっかけでした。

1年ほど製作に取り組み、2011年頃にそのドキュメンタリー映画は公開されました。その映画が、インターネットから全国に配信されたことで、当時は大勢の人々から大きな注目を集めることとなりました。この反響がきっかけとなり、通貨制度の状況を取り扱う他のドキュメンタリーを自分でも観るようになりました。

そして、私自身でも何か革新的な取り組みを始めてみようと考えましたが、当時は集権的な選択肢しか残されていなかったので、非常に困難に感じました。そこにある既存のシステムを批判したり、何らかの方法で革新を起こしたいと思っても、その試みが虚しく終わってしまうのが目に見えていたので、自分自身が挫折のど真ん中にいるような感覚がありました。

転換点は、Bitcoinについて知った3年前でした。Bitcoinとは一体何かということを紹介され、後戻りできない世界へと足を踏み入れていきました。また、暗号通貨とアートの世界を融合するという選択肢があることもわかったので、自分のギャラリーを閉め、フルタイムのクリプト・アーティストという全く別の方向に進み始めました。

私は、Cryptovoxelsというプラットフォームで、ギザの大ピラミッドの形をしたギャラリーを友人のOgarと一緒に作成しました。いくつかのフロアに分かれた黄金のピラミッドの中で、展示されている作品がご覧いただけます。

クリプト・アートの未来は必ず美しいものになると思っています。このようなアート作品は、ブル・マーケットに突入する直前の状態にあります。クリプト・アートの領域においては、アーティストとコレクターの数が釣り合っていない状態だと思うからです。コレクター達は、徐々にNFT(非代替トークン)の世界に入り始めていて、現実世界の物理的なアート作品で生まれる多くの問題が、暗号通貨で解決できることを理解し始めています。

しかしながら、暗号通貨の世界には、例えばEthereumしか使用せず、それ以外のプラットフォームは認めないというような認識の隔たりや不協和音も存在しています。それに対して、Ethereumはゴールドではないから本当のお金ではないと主張する人もいます。これは、デジタルアートは本物のアートではないと主張する人のロジックと同じだと思います。

現在、Ethereumで提供されているソリューションを使用すれば、JPEGの画像データの中に値を代入していくことが可能となっています。これは、人間の直感とは逆行する方法ではありますが、コンピューティングの長い歴史の中で、非常に優れた方法とスピードで多くのことが実現できるようになってきています。今まで馴染みのあった物理的なアートが、突然、希少性を持ったJPEGデータに変化し始めているのです。このような新しいアイデアに慣れていくには少し時間が必要なのだと思います。

The Universal Invitation:ユニバーサル・インビテーション

私は、パキスタンの人気女優であるビーナ・マリク(Veena Malik)と6つのアート作品を作りました。そして、プロジェクトの後にまだ残っていたアート素材を使い、この「ユニバーサル・インビテーション」という作品を作り上げました。Cryptovoxelsの私のピラミッドに入ると、入り口の所で一番最初に目に入るのがこの作品です。作品名の通り、このピラミッドにあらゆる人々を招待できるようにという願いで作りました。

   

「新時代の始まり:The Beginning of a New Era」

今までに私が制作した中で一番知られている作品は、ビーナと作った「新時代の始まり」です。彼女は周囲の目を気にせず、我が道をゆく人です。2011年に出会ったときに、彼女の話に非常に感動しインスピレーションを受けたので、ボディペイントで6つの美しいアート作品を制作しました。

当時、彼女がパキスタンのイスラム教徒であったこともあり、ボディペイントというアートが大きな問題となり、作品の公開時には非常に大きな議論を巻き起こしました。ボディペイントというものは、少し怪しい目で見られがちです。しかし、実際の作品を見てもらうことで、このプロジェクトが火に油を注ぐものではなく文化間の架け橋となるものであると理解してもらえたと思います。プロジェクトによって世界をより良い方向に変えるということが、一番意義深いことだと思っています。

ここまで大きな反響がアート作品によって起こるのは初めてだったので、ビーナはBBC Worldなどのニュース放送局からテレビ出演の依頼を受けるようになりました。テレビ放送によって、大スクリーンにプロジェクトで制作したアート作品も公開されました。ビーナ・マリクとこのプロジェクトに関する話題は、ネットを除いたとしても3億人以上の人々に届いたようで、非常に嬉しく感じました。

同じようなプロジェクトができればと、現在も新しい出会いを求め続けています。次は、ビーナ・マリクと同様のコンセプトで、日本の芸能人の方ともアート作品を制作するかもしれません。私は、人類発展のためのツボを見つけ出し、その下で沸き立つ芸術を表へと引き出すために、このクリプト・アートという世界にいます。皆に開かれた暗号通貨という世界がもたらす美しいプラットフォームを通して、それが可能になると考えています。

ウォール街支持派のアーティストはいないですし、反ビットコイン派のアーティストも存在しません。この世界では、ほとんど全てのアーティストが暗号通貨を支持しています。非常に独善的であり、それぞれに大きく異なるアーティストというコミュニティで、ここまで同じ様な声が挙げられる状況は人類の歴史を遡ってもなかったと思います。

暗号通貨のコミュニティーは暗号通貨の可能性に気付いていますが、芸術・アーティストに関して言うと、クリプト・アートの本当のポテンシャルは、まだあまり認知されていないと思います。

この世界に入ってきた全ての人達が、暗号通貨を一般社会に広く普及させるという理念と願望を共有しています。何の才能があるかや、どのように自分のメッセージを発信するかということに関わらず、ここにいる全ての人達の声が非常に大切だと思います。一部には、Nouriel Roubini氏のように反対意見を表明される方もいますが、界隈の全ての人達の声によって、私達はクリプト・コミュニティとして結束することができると思います。

   

「Red Eye:レッド・アイ」

3年前、暗号通貨の世界に完全に入り込んだ最初の4ヶ月間は、中々眠ることができませんでした。後戻りできない道に足を踏み入れ、最終的には睡眠薬を飲むことになってしまいました。暗号通貨に関する全ての事柄を直ぐに理解したいと考えましたが、吸収しなければならない情報は山のようにありました。この世界に入ってから既に3年が経ち、今は落ち着いてきましたが、最初の方はかなり大変でした。この「レッド・アイ」では、今も抜け出すことができない道に入り込んだ時のスパイラルを表現しました。 

後世に名を残したい芸術家たち

トーン・ベイズ氏(Tone Vays)と知り合って以来、彼は私の作品のコレクターになりました。2019年にロンドンで開催されたCC4で、彼は「Fork and Flip」という作品シリーズの最後の1作品を収集しました。このことがきっかけとなり「Selling Banks Their Fat Asses Back」という作品の制作依頼をもらいました。

当時、彼がつけていた腕時計の話をしますが、その時計の値段はおそらく400~500ドルくらいだったと思います。彼はそれを4BTCかあるいは5BTCくらいを支払って購入したはずです。しかし現在、Bitcoinの価値は彼が時計を購入した時よりもはるかに高騰しています。彼はきっと怒り心頭でしょう。

しかしこれはパイオニアの宿命です。パイオニア、あるいは先駆者の人たちというのは、時には自分のBitcoinをわずかな金額で手放さなければならなかったのです。これは市場全体の存続のためです。

例えばの話ですが、1BTCの価値のある作品があったとして、その価格で売れたとしましょう。そうすると、もう同じ1BTCという価格でその作品を買い戻すということは不可能になります。ということはつまり、もしも今後同じような作品があったとしても今度は1BTCで売るというのは非常識になるということです。

今後同じような作品を売るのであれば、3BTC、あるいは10BTCというように、もっと高い値段で売らなければならないということになります。これは非常に良いことでもあります。世界中のアーティストたちはこのような活動を通して、自分の時代で名を残そうと最善を尽くしているのです。

例えば私の芸術活動も、芸術的作品という安定した形をしています。Veena Malikプロジェクトなどのプロジェクトをはじめとし、私の様々な作品は、私の芸術の価値を示してくれるのです。そしてこれらの作品は願わくば、私の名前が次の世代の人々にも記憶されるような評価をもたらしてくれるでしょう。

私の作品も将来的にはもっと価値が高くなる可能性があります。人々はBitcoinに投資するという形で私の作品を利用したりして、将来的にもっとお金を手に入れることができるかもしれません。

この一連の仕組みは、全てブロックチェーンの一部として、実物資産によってバックアップされています。こうして私は色々な要素を混ぜ合わせて美味しく調理して、大勢の人に楽しんでもらえるようなものをつくりたいと思っています。

よく理解していないものには投資しない 

数年前にBitcoinの価格が再び高騰した時があり、この時に私に声をかけてきた友人がいました。これを機に彼の代わりに投資を行なってほしいと頼まれましたが、私の答えは「絶対に無理」でした。

第一に、この業界については自分自身で理解する必要があります。自分が何をしようとしているのか理解するために、まずは手始めにドキュメンタリー映画でも見るべきだと思います。

「お金を預けてくれたら無限に増やしてあげられます」などと言う人がいたら、絶対にその人には近づかないようにしましょう。Bitcoinについてしっかり学びましょう。オンラインでの口座の開き方から、ホットウォレットとコールドウォレットについてまで、知るべきことは色々あります。

決して、理解していないものにお金をつぎ込んで、自分の家族や友人に責任を負わせるようなことがあってはなりません。たとえ誰だろうと他の人に責任を負わせるようなことがあってはなりません。

私のBitcoinとの関わり方は、関わり始めた時から一貫して変わりません。私は自分の作品を暗号通貨建てで販売しています。しかし自分のお金を投資してコインを得ることはしていません。もちろん初期の頃に勧められて入手したコインがいくらかあるにはあるのですが、本当にそれっきりです。

コロナで浮き彫りになった問題と希望

暗号通貨の世界について、私に最高の方法で紹介してくれたのはアンドレアス・M. アントノプロス氏であり、彼には心から感謝しています。

彼は私を導き、身の回りにあるプロパガンダ的視点についての理解を与えてくれました。この世界の本当の意味合いについて教えてくれました。そして非中央集権という特性をもつ暗号通貨の重要性について教えてくれました。

いわゆる先進国と呼ばれる国々でさえも、今では多くの問題を抱えています。とりわけ現在も続いているコロナ禍の中で、銀行はお金を刷り続けてすっかり狂ったようになってしまっています。我々はこの状況を実際に目の当たりにしています。

パンデミックはある意味、法定通貨システムがどうなるかを観察するのにもってこいの状況を作りだしてくれました。もしもBitcoinをはじめとする暗号通貨が存在していなかったら、どれだけ絶望的な気持ちになったか想像もつきません。

この希望は未来を照らす一筋の光であり、我々の目指すべきものだと思います。この希望はアーティストたちがポジティブになれる方法であり、世界中の探究者たちが真実を見つけるための道でもあります。

これは私自身にとって大変重要なことですし、他の多くのクリプトアーティストや、コミュニティにいる人々も同じように感じていると思います。

血塗られたポッドキャストフロア:Blood on the podcast floor 


ポッドキャスト番組「The Bad Crypto Podcast」のチームにはとても感謝しています。彼らは、この業界における私の成長を語るのに欠かすことのできない存在です。

私は暗号通貨の世界に入って間もない頃から彼らの番組を聴きはじめました。その過程で友人関係になったのですが、本当に絆が深まるきっかけとなったのは「Blood on the podcast floor」というアート作品のプロジェクトだと思います。

当時の私は変化を求めていて、それほど重くないテーマで楽しいものを制作したいと思っていました。自分の今までのプロジェクトは物議を醸すようなテーマのものがたくさんあって、重いものはもう既に十分足りていたからです。

そこで制作したのが「Blood on the podcast floor」という作品です。キング・オブ・ヘル(king of hell、地獄の王)というイメージを取り入れました。ジョニー・デップを参考にしたところなんかもあって、ポップカルチャーからの引用がたくさん含まれた作品となっています。

作品とサインとチャリティー

「The Bad Crypto Podcast」のチームとはもともとAdam Williams氏の紹介でお互いに知り合いました。「Blood on the podcast floor」の作品の制作プロジェクトはWorld Cryptocoinというところの依頼によって行われたものです。

我々はプロジェクトの一環としてライブのポッドキャストイベントも行い、作品をプレゼンしました。イベントの後には暗号通貨コミュニティの多くの著名人から作品にサインをしてもらいました。Maxine Ryan氏やCharlie Lee氏といった有名人をはじめ、多くの人が作品にサインをしてくれました。

我々はサイン入りのこの作品を慈善事業に寄付することに決め、目標額である100万ドルを集めようとしています。作品の購入代金はテキサスにあるヒューストン・ウィメンズ・シェルターという施設に寄付されます。

このシェルターは、女性や子供に保護できる場所を提供する慈善団体の施設として14年間運営されてきました。今では男性やDVの被害者を保護する場所も提供しています。このチャリティーのために我々現在、今までに作った中で最も高価なクリプトアート作品を作ろうとしているのです。

デジタルアートの利点を活かす

作品に多くの人にサインをしてもらったと言いましたが、サインしてもらった人の中には、実は実際にはよく知らない人もたくさんいます。

しかしよく知らない人同士でも、この世界のために何か良いことをしたいという同じ思いをもつ人たちを、暗号通貨を通して団結させることができたのです。

サインをしてもらった作品はもう私の手元にはありません。私は実はとても忘れっぽい性格をしていて、空港のトイレに作品を置き忘れてしまったということもあるほどです。

それ以来怖くなってしまって、悪夢のような想像ばかりしてしまうのです。例えば「もしも今この作品を紛失してしまったとしても、誰もそのことを信じてはくれないだろう」というような恐ろしい想像です。

「もしかすると私がこっそり販売したと思われて、評判が落ちてしまうかもしれない」というような想像も頭をよぎったことがあります。

作品を持っておくのが怖くなった私は、色々な人にサインをしてもらった作品を第三者に譲って預かってもらっています。第三者に預けた代償として、これ以上のサインを募ることはできなくなってしまいました。

しかししばらく後にある暗号通貨業界のインフルエンサーが、物理的なサインではなくデジタルでサインを募ったらどうかと提案をしてくれました。確かによくよく考えてみれば、もともとの作品もデジタルファイルでした。

デジタルファイルの作成が終わったら、それを印刷して物理的な芸術作品として完成させるという流れでした。購入者にはデジタルファイルも一緒に渡す予定なのですが、それまでは暗号通貨業界のインフルエンサーやスターたちからのサインを募り続けて、作品の発展を止めないでおくつもりです。

このような大規模な作品は他の誰にでもつくれるものではないと思っています。同じようなプロセスを試みる人はたくさんいるかもしれませんが、我々がつくっているものと同じ規模まで大きくなるものはないと思います。

不可視性:Invisibility

Litecoin Foundationから依頼を受けて、この「Invisibility」という作品を制作しました。バイヤーからBTCで支払いを受けたのはこの時が初めてで、私にとって非常にすばらしい瞬間でした。

この作品の制作には3、4ヶ月の期間がかかりました。それぐらいの時間をかけて、全てのコンテンツを盛り込みました。過去100年間のアメリカの古い貨幣制度の話について、作中に描かれているピラミッドの中に歴史的な説明が隠されています。また、私のYoutubeチャンネルの中でもこの古い制度についてお話しています。

この作品の表現しているストーリーというのは「健全なヒエラルキーと不健全なヒエラルキーとは何か」ということと、それから「中央集権的なシステムと非中央集権的なシステムのバランスをとることで、この世界をいくらか良くすることができる」ということです。

お金は地球を流れる血液

「地球の詰まった動脈を切り開く:Open the Planets Clogged Arteries」という作品では「中央銀行や通貨システムはもはや無視できないほど腐敗している」という考えを表現したいと思いました。

比喩的な表現を用いて、お金を地球を流れる血液に例えています。血液というのは、全身にエネルギーを回すために血管を流れています。地球にとっては、エネルギーを全体に回しているのはお金です。

地球にとっての血液であるお金が腐敗していると、地球の血管が詰まってしまうということです。地球の血管が詰まってしまうほどシステムは腐敗している、という主張がしたかったのです。

地球の詰まった血管を再び開いてくれる存在が暗号通貨です。なぜなら暗号通貨は、銀行にアクセスできない世界中の人々に希望を与えてくれる存在だからです。

暗号通貨というのはいわば何かを照らしてくれるライトのような存在だと思います。ライトは明るく、仕組みがよくわからなくてもとりあえず役に立ちます。これと同じように、貨幣の歴史やシステムついて全くわからなくても、暗号通貨はライト的存在であり役に立つものなのです。

例えばですが、国を超えた送金をしたいと考えている大富豪の人がいたとしましょう。Bitcoinを使用すれば国境を超えて大量の送金をすることができます。しかもどんなに高額な送金であっても、ほんのわずかな手数料しかかかりません。

こういった情報は、取引をしたい人にとって非常に重要なものです。しかしこの世界は一部の第三者によってとことん支配されています。この第三者の正体は本当に取るに足らないものです。権力を濫用している会計士だとでも言うべきしょうか。人々はすぐにこのことに気付くでしょう。

差し出がましいようなことを言いますが、今こそ、この地球のつまりきった血管の中から大量の寄生虫を一掃するべき時だと思います。地球が心臓発作を起こしたりすることのないように、つまった動脈を切り開く時がきたのです。

これは世界のどの大国にも当てはまることです。もちろん日本も例外ではありません。私はこれまでの人生の中でたくさん旅をしてきました。日本も11歳の時に訪れたことがあります。

私は初めて日本を訪れて以来、再び日本を訪れる機会を探しています。日本の文化も、日本のかかえている複雑さも不思議さも、全てとても好きだからです。日本という国は、まるで芸術家の頭の中のようです。とても整然としていて簡潔な部分があるかと思えば、本当に奇妙な部分もたくさんあるのです。

アイ・アム・サトシ・ナカモト “I am Satoshi Nakamoto”

この作品は、いつか日本で発表したいと思っている作品です。これは言うまでもないことかもしれませんが、この作品はこんな題名ですが私は決してこれを通して「我こそはサトシだ」と主張する馬鹿馬鹿しいゲームに参加しようとしているわけではありません。

これは私が初めて制作したクリプトアートなのですが、当時は「サトシは一体誰なのか」ということが切実な問題となっていました。今でもそうかもしれません。

私はこの問題において本当に重要なことは何かということを問うために、命題を反転させました。この手法は心理学NLP(Neuro-Linguistic Programming、神経言語的プログラミング)において「リフレーミング」と呼ばれているものです。

問われるべき命題は「どうして私がサトシ・ナカモトなのか」というものです。するべきことは、サトシの技術を使い「どうして自分こそがサトシなのか」「何が私をサトシにするのか」と問うことなのです。

そうすれば、人生を今の何百倍も生産的なものにすることができるでしょう。また「サトシは彼だ」とか、「彼女だ」「あの人たちだ」というような論争に巻込まれることもありません。

この作品が、パーカーのフード越しに世界を見る構造となっているのにはこのような意図があります。フードを通して見えているのは、今まさに私のこの作品とつながりあっている、現実世界なのです。

「何が自分をサトシにするのか」を問うということはつまり、「自分はこの技術をどのように利用できるのか、どのように重要なのか、この技術について世界に何を伝えることができるのか」というような問題について問うということです。

これらの問題について自問自答する時は確かに、すべての物事はより意味を持つようになってくると思います。そして、これから自分がやりたいことをより生産的に始められるようになると思います。

幸運の兵士 Soldier of Fortune

この作品は復元版です。オリジナルを元にして再び描かれたもので、2m×1mのキャンバスサイズに印刷されています。この作品は枚数を物理的に限定したいと考えました。したがってこの作品はこの世に3枚のみ存在します。

この作品の価格は1BTCです。価格がBitcoinに連動しているという意味で、安定したアートなのです。たとえ10年後になっても価格はずっと1BTCです。将来的にどうなるかは想像がつくと思います。

「ステーブルコイン」ならぬ「ステーブルアート」

アートの価値は何なのか、なぜ壁に飾るものではなく投資するものなのか、ということを暗号通貨界隈にいる人たちに色々な手をつかって説明しようとしている自分がいました。それが先ほどのアートの背景にあるロジックです。

もしかすると「暗号通貨はクールでいかしているから」という理由で、余裕資金を暗号通貨に投資する人がいるかもしれません。

しかし暗号通貨の世界に入るのは粋だ、と思っている人もいる一方で、我々アーティストの中には、もう芸術の世界で数十年間もプロとしてやってきた人たちもいます。そういった人たちの中には「暗号通貨はそんなにクールなものじゃなくて無粋だ」と思っているような人もいるのです。

しかしそれでも、現在暗号通貨の世界には圧倒的な数のアーティストがいます。皆全く異なる芸術的視点を持った人たちです。ところが、我々は様々なことに関しては同じ世界の線上に置かれてます。

その中で、私のしたように「安定したアート」を創り出せば、コミュニティ全体の人々が本質的な意味合いを理解できるようになってくると思います。「安定したアート」というのはいわばステーブルコインと同じようなロジックです。こう考えると「ステーブルアート」という概念も理解しやすいかと思います。

金融出身のクリプトアーティスト達

3年程前、私が初めてこの世界に足を踏み入れた時、クリプトアーティストはほとんどいませんでした。Crypto GraffitiやCryptokittiesがまだ始まったばかりの頃でした。トレバー・ジョーンズ氏(Trevor Jones)も、私と同じくらいの時にこの世界に入ってきました。

トム・バドリー(Tom Badley)氏というなかなか面白いアーティストがいます。彼は中央銀行で働いた経験があるので、我々が使っていたお金を実際に「デザイン」していた人です。彼は本物のお金をデザインする方法を知っています。

したがって、ジョン・マカフィー氏やジャック・ドーシー氏といった人物の肖像画を作り、自らのマネーアートに取り入れています。バドリー氏は自分のマネーアートをNFTとして発行し、通貨としても印刷しています。彼はとてもユニークなスキルを持っています。

ジョジー・ベリーニ氏(Josie Bellini)も、大変興味深い視点の持ち主です。彼女もまた銀行業界出身で、金融システムについてよく理解しています。彼女は自分の持っている銀行システムについての知識やコンセプトの全てを、アートに変える方法を独学で学ぼうとしています。

彼女の作品は、従来の芸術界にある様々なアートよりもはるかに面白いものです。なぜなら彼女の作品の後ろには、金融システムについての真の理解があるからです。

私がご紹介してきましたように、この世界には面白い事をしている人がたくさんいます。このような世界の成長を見守るのはとても楽しいことです。

クリプトアート業界の壮絶な争い

クリプトアーティストのプラットフォームでは、全員に公平な分配が行われるわけではありません。だからこそ人々がお金や欲にかまけてしまい、多少悪質な環境になってしまったりもします。

しかし人々は、これを資本主義のせいだと勘違いしがちです。ところが実際は資本主義が原因ではなく、問題は資本主義よりもずっと古く根深いのです。

クリプトアート業界には、Crypto VoxelsやBlockchain Art exchange、SuperRare、そしてKnownOriginといった多種多様なプラットフォームが存在します。これらのプラットフォームは、実は生き残りをかけた壮絶な争いをしてます。優位性だけを争っているわけではないのです。 

中には、先駆者となるべく何百万ものお金を投資し、アート業界における次のグーグルの座を狙っているようなところすらあります。こういったことが起きているということはつまり、アーティストにとっても、汚れ役を務めたり水面下で動いたりと、不正を行うインセンティブが既に存在しているのです。

例えば適当に誰かに、昔の有名な画家の名前を挙げてもらうとします。そうすると「ピカソ」とか、そういった有名どころ数人くらいは出てくるかもしれません。しかしそれが関の山でしょう。

私はアーティストのこのような宿命についてよく理解しています。しかしだからと言って、この名を残すゲームにおいて不正をする気も一切ありません。

私は「優れたアーティストに先を越されるかもしれない、それはすごくいらつくことかもしれない」ということを認めて受け入れるようにしています。いらつく気持ちは全て飲み込み、再びリングに上がるのです。 

これがアートの世界における私なりの戦い方です。中には戦いに参加するだけの独創性を持ち合わせていないような人もいるかもしれません。そういう人は何としてでも別の道を探ろうとするのです。これは自然の摂理です。

NFTの価値を見極める困難さ

我々が今まで構築してきたこの世界の表面的な部分を、皆は見ています。もっと奥まで見ていくと、ピラミッドの中に隠された秘密が見えてくるように、様々なものが見えてきます。

本物のピラミッドの奥深くに秘密が隠されているように、暗号通貨の世界にも、秘密が隠されていると思います。この世界は決してファストフードのように扱うわけにはいかない世界なのです。

つまり、ただ便乗しようなどとは考えていけない世界です。例えば私は以前自分の友人にも「自分でリサーチをしないといけない」と言いました。その友人が「暗号通貨にお金をつぎ込もうとは思わないけど、ただこの流れには乗りたい」と言ったからです。

このお話は、暗号通貨アーティストにも当てはまることです。私は数多くのアーティストを見てきました。彼らは自分の撮影作品ではない写真に、技術も何も要しないフォトショップアプリを使って、ほんの30分くらいの時間をかけて加工を施します。

要するに誰か他の人の作品を盗んで、それをプラットフォームに載せているのです。これは写真家だけでなく、オリジナルのアーティストの作品をも盗む行為です。

そして盗んだ作品を、オリジナル作品として人々に認識されるような形で公開するのです。例えばアンディ・ウォーホルがマリリン・モンローのポートレートをたくさん作って出した時のような感じです。

私がコレクターたちに伝えたいのは、このようなことがあるから、旧来のアート界のシステムが今までにないほど腐敗しきってしまったのだということです。そして、クリプトアートこそ、全てが新しく始まろうとしている場なのだということを声を大にして言いたいです。

この世界には画廊や美術館はありません。旧来の遺産的なアート界の構成部品であった不要なものは、ここには何一つありません。しかしこれらのものは徐々に出現し始めています。そしてこの業界が果たして儲かるのかどうか、調べようとしています。

しかしクリプトアートのコミュニティは、空間を互いに共有しているアーティストたちの場所であり、基準がほとんど存在しません。

とはいえ、例えば70歳前後で何百万ドルも稼いだキャリアを持つような人々や、それとは真逆の立場にいるアーティストのことも考えなければなりません。

クオリティやキャリアという点で考慮しなければならないのは、そのアーティストが何をしてきたのか、どれだけ突出しているのか、あるいはキャリアがどれだけ革新的で進歩を遂げているのか、といった部分です。以上の点を考慮してNFTやアートピースに価値があるのかどうかを見極めることが重要です。

ありえない価格で売られているのか、あるいは100ドル前後とお買い得な価格なのか、こういったことについて考えます。この世界にはまだ洗練されたものがあまり入ってきていません。

私のような人間にとっては、時にフラストレーションがたまることもあります。ただ、同時に素晴らしい機会でもあると思っています。多くの人がこの世界において名声を得ました。非常に芸術的であたかもミステリーのように、もしかするとある日突然、私が馬鹿馬鹿しいと思っていたようなものが、非常に高い価値を持つようになるかもしれません。

私は決して芸術を否定したいわけではないのです。ただ、少し複雑であるということを伝えたいのです。コインへの投資やBitcoinの管理について考えるのには非常に時間がかかります。クリプトアートの世界も同じで、近道はありません。しかしそれでも、賢明な判断をするために努力することはできます。

幸いなことに、今このアートの世界はチャンスであふれています。コミュニティはまだ小さく、アーティストがどんどん登場している時期なのです。多くのクリプトアート作品の価値は現在の10倍にも跳ね上がるでしょう。そして愛好家やコレクターの数も爆発的に増加するでしょう。

少し前の話ですが、アメリカのある会社のCEOが「自分の壁にクリプトアート作品を飾る準備をしているから、アーティストの方は作品をおすすめしてほしい」という内容の投稿をしていました。

そこで私は彼にDMを送り「作品はもう決められましたか」と聞きました。すると彼からは「非常に驚いていて、まだ決めていません」という返信が返ってきました。彼のもとには、様々なアーティストから200通以上もの、アート作品やウェブサイト等が紹介が届きました。それで彼は完全に圧倒され、口を閉ざしてしまったのです。

彼に起こったことは捉えようによっては「受信ボックスにアーティストがこぞってスパムを送ったらどうなるか」という壮大な実験でした。

この世界に今まで投資してきたことがなく慣れていない人は、学んで理解する必要があります。そして今まで慣れ親しんできたものとの間で調整作業をする必要があるのです。

表現の自由と著作権の問題

ブロックチェーン技術による著作権については、私もよく考えます。非常に難しい問題だと思っています。

暗号通貨はある意味本当に、自由の最後の砦だと思います。ところがアイデアという側面から考えると、最も排他的なシステムであるとも言えます。たった一つのアイデアしか存在してはいけないというのが根底にあるからです。

ところがアートは、一つの意見だけとは限りません。例えば、フィンランドにはロゴマークを使ったアートを多く手がけているアーティストがいます。彼の手法というのは、国際的な企業のロゴをマッシュアップして元の企業に対して反抗を示すためのロゴをつくりだすことです。

彼のアートは反資本主義的な目的で使用されているので、何度も訴えられています。しかし彼は表現の自由のもとに法律で守られているため、いつも勝訴しています。

また、エドワード・スノーデンを気に入っていて、スノーデンのイメージを3Dで表現しているアーティストもいます。彼のアートの主題がスノーデンへの貢献であることは明らかなので、このような作品に対して著作権の追求がなされるのは、通常考えにくいと思います。

著作権問題というのは、交渉に時間を要します。しかも、ケースバイケースによる対応が求められます。ところが、いちいちそんな時間がとれる人などいません。したがってそんなことは無理難題ということになります。

特に今日においては、毎日のようにプラットフォームに参加してくる人が増え続けているのでなおさらです。現在、言論の自由に関する論争が進行しているようなプラットフォームは、将来必ず著作権問題の論争が生じてくると思います。

問題が、様々な喧嘩によって進展していくような場合もあるでしょう。そうすると不正がたくさん起こるのでとても厄介です。しかし一方では、本当に粗悪は盗作作品は生き残れなくなっていくという良い点もあります。

私は、世の中は最終的にバランスがとれるようになっていると強く信じています。宇宙は非常に巨大なバランスをとる仕組みです。そして我々は、その中で群れている小さな蟻のような存在です。

つまり世界というのは最終的には全体の帳尻が合うように出来ていて、我々はその中で生きながらえるように出来ているということです。ちょうど「陰と陽」のように、良いものと悪いものはバランスよく成長し続けていくものだと思っています。

暗号通貨が世界の光であり、希望であるという考えを持っています。しかし、例えば詐欺にあったり本当にひどい事件にあったりと、暗号通貨の影の側面も経験したことがない限りは、この世界に完全に入り込んでいるとは言えないと思います。

おすすめのインフルエンサー

様々な理由でフォローしている人が何人かいるのですが、その中でもひときわ輝いているのはアンドレアス・M. アントノプロス氏だと思っています。

彼の言葉の誠実さは時をかけて証明されています。私が考え事をする際も、彼の言葉が何度も繰り返し頭の中に浮かんできます。彼以外の人の名前をここで挙げるのは難しいくらいです。

これから暗号通貨の界隈に入ろうとしている人にも、アンドレアス・M. アントノプロス氏は本当におすすめです。この界隈をよく理解するのにこれ以上おすすめの人物はいません。

彼を通して反中央集権的な視点やその真の意義についての知識を得ることができます。初心者としての初めの数ヶ月は、アンドレアス・M. アントノプロス氏の言葉を聞くことがおすすめです。

おすすめのポッドキャストといえば、Bad Cryptoでしょう。それからアンソニー・ポンプリアーノ氏の出演しているThe Pomp Podcast、そして初期の頃に私を番組に出演させてくれたBasic Crypto Podcastにも賞賛を送りたいです。

Kenn Bosakも素晴らしいです。それからもちろんアンドレアス・M. アントノプロス氏のポッドキャストも要チェックです。最後に、Crypto Stashはプラットフォームの図解を動画で紹介するのがとても上手です。この番組ではプラットフォームの比較も行っています。

The light side of the Moon Art 月の明るい側

10代の頃に、自分の中にアーティストが目覚めました。この作品はそのことを表現した1枚です。当時はピンク・フロイドや、ラッシュ、それからキングストン・ウォールといったバンドの影響を受けていました。特に、フィンランド出身の最高のバンドの一つであるキングストン・ウォールに敬意を持っています。

この作品の中にはピラミッドの形が描かれています。私はその明るい側面と暗い側面を、じっと見つめたいと思ったのです。

明かるい側面と言えば、LightBoxerというバンドがあるのですが、そのバンドのメンバーにAkiというフィンランドの伝説的なギタリストがいました。我々は故郷の他のミュージシャンを通じて友人になりました。

そしてこれがなんと、彼らのデビューアルバムのカバーにつながりました。非常に素晴らしいことです。彼らの音楽には歌詞はありません。しかしそれでも紛れもなく、世界の明るい側面の感覚を与えてくれるのです。

将来はクリプト・ムービーも

暗号通貨に関する内容の良い映画を見てみたいという気持ちは確かにあります。しかしこれまでのところ、このテーマについて扱った映画やテレビシリーズは見たことがありません。将来もしこういった映画制作の話があれば、ぜひとも携わりたいです。

私はアーティストになる前の10年間映画制作業界にいました。映画学校に通い、自分の作品も制作しました。したがって映画製作のプロセスはよく知っています。

暗号通貨に関連する映画はまだ見たことがありません。今のところ「作るならドキュメンタリー」という考えにとらわれているような気もします。ドキュメンタリーこそが最も正確な表現だからです。とはいえ、将来一体何が起こるのか、非常に楽しみです。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

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