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「アイ・アム・サトシ・ナカモト」クリプトアーティスト:ヴェサ・キヴィネン氏 インタビュー ②

フィンランド出身でクリプト・アーティストとして活動するヴェサ・キヴィネン氏(Vesa Kivinen)にインタビューさせていただきました。ブロックチェーンを活用し、全く新しいタイプのアート作品を生み出すキヴィネン氏に「Art for Crypto」というアイデアについて説明していただきました。是非、ご覧ください。

ヴェサ・キヴィネン

インタビュー日 : 2020年5月11日

後世に名を残したい芸術家たち

トーン・ベイズ氏(Tone Vays)と知り合って以来、彼は私の作品のコレクターになりました。2019年にロンドンで開催されたCC4で、彼は「Fork and Flip」という作品シリーズの最後の1作品を収集しました。このことがきっかけとなり「Selling Banks Their Fat Asses Back」という作品の制作依頼をもらいました。

当時、彼がつけていた腕時計の話をしますが、その時計の値段はおそらく400~500ドルくらいだったと思います。彼はそれを4BTCかあるいは5BTCくらいを支払って購入したはずです。しかし現在、Bitcoinの価値は彼が時計を購入した時よりもはるかに高騰しています。彼はきっと怒り心頭でしょう。

しかしこれはパイオニアの宿命です。パイオニア、あるいは先駆者の人たちというのは、時には自分のBitcoinをわずかな金額で手放さなければならなかったのです。これは市場全体の存続のためです。

例えばの話ですが、1BTCの価値のある作品があったとして、その価格で売れたとしましょう。そうすると、もう同じ1BTCという価格でその作品を買い戻すということは不可能になります。ということはつまり、もしも今後同じような作品があったとしても今度は1BTCで売るというのは非常識になるということです。

今後同じような作品を売るのであれば、3BTC、あるいは10BTCというように、もっと高い値段で売らなければならないということになります。これは非常に良いことでもあります。世界中のアーティストたちはこのような活動を通して、自分の時代で名を残そうと最善を尽くしているのです。

例えば私の芸術活動も、芸術的作品という安定した形をしています。Veena Malikプロジェクトなどのプロジェクトをはじめとし、私の様々な作品は、私の芸術の価値を示してくれるのです。そしてこれらの作品は願わくば、私の名前が次の世代の人々にも記憶されるような評価をもたらしてくれるでしょう。

私の作品も将来的にはもっと価値が高くなる可能性があります。人々はBitcoinに投資するという形で私の作品を利用したりして、将来的にもっとお金を手に入れることができるかもしれません。

この一連の仕組みは、全てブロックチェーンの一部として、実物資産によってバックアップされています。こうして私は色々な要素を混ぜ合わせて美味しく調理して、大勢の人に楽しんでもらえるようなものをつくりたいと思っています。

よく理解していないものには投資しない 

数年前にBitcoinの価格が再び高騰した時があり、この時に私に声をかけてきた友人がいました。これを機に彼の代わりに投資を行なってほしいと頼まれましたが、私の答えは「絶対に無理」でした。

第一に、この業界については自分自身で理解する必要があります。自分が何をしようとしているのか理解するために、まずは手始めにドキュメンタリー映画でも見るべきだと思います。

「お金を預けてくれたら無限に増やしてあげられます」などと言う人がいたら、絶対にその人には近づかないようにしましょう。Bitcoinについてしっかり学びましょう。オンラインでの口座の開き方から、ホットウォレットとコールドウォレットについてまで、知るべきことは色々あります。

決して、理解していないものにお金をつぎ込んで、自分の家族や友人に責任を負わせるようなことがあってはなりません。たとえ誰だろうと他の人に責任を負わせるようなことがあってはなりません。

私のBitcoinとの関わり方は、関わり始めた時から一貫して変わりません。私は自分の作品を暗号通貨建てで販売しています。しかし自分のお金を投資してコインを得ることはしていません。もちろん初期の頃に勧められて入手したコインがいくらかあるにはあるのですが、本当にそれっきりです。

コロナで浮き彫りになった問題と希望

暗号通貨の世界について、私に最高の方法で紹介してくれたのはアンドレアス・M. アントノプロス氏であり、彼には心から感謝しています。

彼は私を導き、身の回りにあるプロパガンダ的視点についての理解を与えてくれました。この世界の本当の意味合いについて教えてくれました。そして非中央集権という特性をもつ暗号通貨の重要性について教えてくれました。

いわゆる先進国と呼ばれる国々でさえも、今では多くの問題を抱えています。とりわけ現在も続いているコロナ禍の中で、銀行はお金を刷り続けてすっかり狂ったようになってしまっています。我々はこの状況を実際に目の当たりにしています。

パンデミックはある意味、法定通貨システムがどうなるかを観察するのにもってこいの状況を作りだしてくれました。もしもBitcoinをはじめとする暗号通貨が存在していなかったら、どれだけ絶望的な気持ちになったか想像もつきません。

この希望は未来を照らす一筋の光であり、我々の目指すべきものだと思います。この希望はアーティストたちがポジティブになれる方法であり、世界中の探究者たちが真実を見つけるための道でもあります。

これは私自身にとって大変重要なことですし、他の多くのクリプトアーティストや、コミュニティにいる人々も同じように感じていると思います。

血塗られたポッドキャストフロア:Blood on the podcast floor 


ポッドキャスト番組「The Bad Crypto Podcast」のチームにはとても感謝しています。彼らは、この業界における私の成長を語るのに欠かすことのできない存在です。

私は暗号通貨の世界に入って間もない頃から彼らの番組を聴きはじめました。その過程で友人関係になったのですが、本当に絆が深まるきっかけとなったのは「Blood on the podcast floor」というアート作品のプロジェクトだと思います。

当時の私は変化を求めていて、それほど重くないテーマで楽しいものを制作したいと思っていました。自分の今までのプロジェクトは物議を醸すようなテーマのものがたくさんあって、重いものはもう既に十分足りていたからです。

そこで制作したのが「Blood on the podcast floor」という作品です。キング・オブ・ヘル(king of hell、地獄の王)というイメージを取り入れました。ジョニー・デップを参考にしたところなんかもあって、ポップカルチャーからの引用がたくさん含まれた作品となっています。

作品とサインとチャリティー

「The Bad Crypto Podcast」のチームとはもともとAdam Williams氏の紹介でお互いに知り合いました。「Blood on the podcast floor」の作品の制作プロジェクトはWorld Cryptocoinというところの依頼によって行われたものです。

我々はプロジェクトの一環としてライブのポッドキャストイベントも行い、作品をプレゼンしました。イベントの後には暗号通貨コミュニティの多くの著名人から作品にサインをしてもらいました。Maxine Ryan氏やCharlie Lee氏といった有名人をはじめ、多くの人が作品にサインをしてくれました。

我々はサイン入りのこの作品を慈善事業に寄付することに決め、目標額である100万ドルを集めようとしています。作品の購入代金はテキサスにあるヒューストン・ウィメンズ・シェルターという施設に寄付されます。

このシェルターは、女性や子供に保護できる場所を提供する慈善団体の施設として14年間運営されてきました。今では男性やDVの被害者を保護する場所も提供しています。このチャリティーのために我々現在、今までに作った中で最も高価なクリプトアート作品を作ろうとしているのです。

デジタルアートの利点を活かす

作品に多くの人にサインをしてもらったと言いましたが、サインしてもらった人の中には、実は実際にはよく知らない人もたくさんいます。

しかしよく知らない人同士でも、この世界のために何か良いことをしたいという同じ思いをもつ人たちを、暗号通貨を通して団結させることができたのです。

サインをしてもらった作品はもう私の手元にはありません。私は実はとても忘れっぽい性格をしていて、空港のトイレに作品を置き忘れてしまったということもあるほどです。

それ以来怖くなってしまって、悪夢のような想像ばかりしてしまうのです。例えば「もしも今この作品を紛失してしまったとしても、誰もそのことを信じてはくれないだろう」というような恐ろしい想像です。

「もしかすると私がこっそり販売したと思われて、評判が落ちてしまうかもしれない」というような想像も頭をよぎったことがあります。

作品を持っておくのが怖くなった私は、色々な人にサインをしてもらった作品を第三者に譲って預かってもらっています。第三者に預けた代償として、これ以上のサインを募ることはできなくなってしまいました。

しかししばらく後にある暗号通貨業界のインフルエンサーが、物理的なサインではなくデジタルでサインを募ったらどうかと提案をしてくれました。確かによくよく考えてみれば、もともとの作品もデジタルファイルでした。

デジタルファイルの作成が終わったら、それを印刷して物理的な芸術作品として完成させるという流れでした。購入者にはデジタルファイルも一緒に渡す予定なのですが、それまでは暗号通貨業界のインフルエンサーやスターたちからのサインを募り続けて、作品の発展を止めないでおくつもりです。

このような大規模な作品は他の誰にでもつくれるものではないと思っています。同じようなプロセスを試みる人はたくさんいるかもしれませんが、我々がつくっているものと同じ規模まで大きくなるものはないと思います。

不可視性:Invisibility

Litecoin Foundationから依頼を受けて、この「Invisibility」という作品を制作しました。バイヤーからBTCで支払いを受けたのはこの時が初めてで、私にとって非常にすばらしい瞬間でした。

この作品の制作には3、4ヶ月の期間がかかりました。それぐらいの時間をかけて、全てのコンテンツを盛り込みました。過去100年間のアメリカの古い貨幣制度の話について、作中に描かれているピラミッドの中に歴史的な説明が隠されています。また、私のYoutubeチャンネルの中でもこの古い制度についてお話しています。

この作品の表現しているストーリーというのは「健全なヒエラルキーと不健全なヒエラルキーとは何か」ということと、それから「中央集権的なシステムと非中央集権的なシステムのバランスをとることで、この世界をいくらか良くすることができる」ということです。

お金は地球を流れる血液

「地球の詰まった動脈を切り開く:Open the Planets Clogged Arteries」という作品では「中央銀行や通貨システムはもはや無視できないほど腐敗している」という考えを表現したいと思いました。

比喩的な表現を用いて、お金を地球を流れる血液に例えています。血液というのは、全身にエネルギーを回すために血管を流れています。地球にとっては、エネルギーを全体に回しているのはお金です。

地球にとっての血液であるお金が腐敗していると、地球の血管が詰まってしまうということです。地球の血管が詰まってしまうほどシステムは腐敗している、という主張がしたかったのです。

地球の詰まった血管を再び開いてくれる存在が暗号通貨です。なぜなら暗号通貨は、銀行にアクセスできない世界中の人々に希望を与えてくれる存在だからです。

暗号通貨というのはいわば何かを照らしてくれるライトのような存在だと思います。ライトは明るく、仕組みがよくわからなくてもとりあえず役に立ちます。これと同じように、貨幣の歴史やシステムついて全くわからなくても、暗号通貨はライト的存在であり役に立つものなのです。

例えばですが、国を超えた送金をしたいと考えている大富豪の人がいたとしましょう。Bitcoinを使用すれば国境を超えて大量の送金をすることができます。しかもどんなに高額な送金であっても、ほんのわずかな手数料しかかかりません。

こういった情報は、取引をしたい人にとって非常に重要なものです。しかしこの世界は一部の第三者によってとことん支配されています。この第三者の正体は本当に取るに足らないものです。権力を濫用している会計士だとでも言うべきしょうか。人々はすぐにこのことに気付くでしょう。

差し出がましいようなことを言いますが、今こそ、この地球のつまりきった血管の中から大量の寄生虫を一掃するべき時だと思います。地球が心臓発作を起こしたりすることのないように、つまった動脈を切り開く時がきたのです。

これは世界のどの大国にも当てはまることです。もちろん日本も例外ではありません。私はこれまでの人生の中でたくさん旅をしてきました。日本も11歳の時に訪れたことがあります。

私は初めて日本を訪れて以来、再び日本を訪れる機会を探しています。日本の文化も、日本のかかえている複雑さも不思議さも、全てとても好きだからです。日本という国は、まるで芸術家の頭の中のようです。とても整然としていて簡潔な部分があるかと思えば、本当に奇妙な部分もたくさんあるのです。

アイ・アム・サトシ・ナカモト “I am Satoshi Nakamoto”

この作品は、いつか日本で発表したいと思っている作品です。これは言うまでもないことかもしれませんが、この作品はこんな題名ですが私は決してこれを通して「我こそはサトシだ」と主張する馬鹿馬鹿しいゲームに参加しようとしているわけではありません。

これは私が初めて制作したクリプトアートなのですが、当時は「サトシは一体誰なのか」ということが切実な問題となっていました。今でもそうかもしれません。

私はこの問題において本当に重要なことは何かということを問うために、命題を反転させました。この手法は心理学NLP(Neuro-Linguistic Programming、神経言語的プログラミング)において「リフレーミング」と呼ばれているものです。

問われるべき命題は「どうして私がサトシ・ナカモトなのか」というものです。するべきことは、サトシの技術を使い「どうして自分こそがサトシなのか」「何が私をサトシにするのか」と問うことなのです。

そうすれば、人生を今の何百倍も生産的なものにすることができるでしょう。また「サトシは彼だ」とか、「彼女だ」「あの人たちだ」というような論争に巻込まれることもありません。

この作品が、パーカーのフード越しに世界を見る構造となっているのにはこのような意図があります。フードを通して見えているのは、今まさに私のこの作品とつながりあっている、現実世界なのです。

「何が自分をサトシにするのか」を問うということはつまり、「自分はこの技術をどのように利用できるのか、どのように重要なのか、この技術について世界に何を伝えることができるのか」というような問題について問うということです。

これらの問題について自問自答する時は確かに、すべての物事はより意味を持つようになってくると思います。そして、これから自分がやりたいことをより生産的に始められるようになると思います。

幸運の兵士 Soldier of Fortune

この作品は復元版です。オリジナルを元にして再び描かれたもので、2m×1mのキャンバスサイズに印刷されています。この作品は枚数を物理的に限定したいと考えました。したがってこの作品はこの世に3枚のみ存在します。

この作品の価格は1BTCです。価格がBitcoinに連動しているという意味で、安定したアートなのです。たとえ10年後になっても価格はずっと1BTCです。将来的にどうなるかは想像がつくと思います。

「ステーブルコイン」ならぬ「ステーブルアート」

アートの価値は何なのか、なぜ壁に飾るものではなく投資するものなのか、ということを暗号通貨界隈にいる人たちに色々な手をつかって説明しようとしている自分がいました。それが先ほどのアートの背景にあるロジックです。

もしかすると「暗号通貨はクールでいかしているから」という理由で、余裕資金を暗号通貨に投資する人がいるかもしれません。

しかし暗号通貨の世界に入るのは粋だ、と思っている人もいる一方で、我々アーティストの中には、もう芸術の世界で数十年間もプロとしてやってきた人たちもいます。そういった人たちの中には「暗号通貨はそんなにクールなものじゃなくて無粋だ」と思っているような人もいるのです。

しかしそれでも、現在暗号通貨の世界には圧倒的な数のアーティストがいます。皆全く異なる芸術的視点を持った人たちです。ところが、我々は様々なことに関しては同じ世界の線上に置かれてます。

その中で、私のしたように「安定したアート」を創り出せば、コミュニティ全体の人々が本質的な意味合いを理解できるようになってくると思います。「安定したアート」というのはいわばステーブルコインと同じようなロジックです。こう考えると「ステーブルアート」という概念も理解しやすいかと思います。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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