ブロックチェーン開発企業、BlockstreamのCOOであり、またゲーム開発会社PixelmatricのCEOでもあるサムソン・モウ氏(Samson Mow)にインタビューさせていただきました。今回は、ポッドキャストの番組である「Magical Crypto Friends」を始めた経緯や、ハイパー・ビットコイン化という考え方について語っていただきました。また暗号通貨業界とゲーム業界の今後の可能性についてお伺いしました。ぜひご覧ください。
インタビュー日 : 2020年10月26日
Magical Crypto Friendsについて
Magical Crypto Friends(MCF)は、2017年に私とCharlie Lee、Riccardo Spagni、そしてWhalePandaの4人で始めた番組です。
当時はいわゆる「Bitcoin Civil War:ビットコイン・シビル・ウォー」が終わったばかりで、メディアのFUD(不安を煽るプロパガンダ)に対抗するためにも、そして悪徳業者によるFUDに対抗するためにも、プラットフォームを構築するのは良いことだと考えていました。
MCFは、我々がこの業界の様々なことについて考えるためのプラットフォームでした。最近は誰もがポッドキャストをしていますが、2017年当時、ポッドキャストは今ほど人気がありませんでした。
この番組は自分たちのために制作していたので、必死になって取り組んでいるというわけではなく、通常は月1話のペースで放送するといった感じです。4人で様々なテーマについて話すというスタイルで、我々は可愛いアニメ調のマスコットとして登場します。楽しくて気楽なポッドキャストだと思っています。
私は「Excellion」というハンドルネームを使っていて、ハンドルネームに「ライオン」という言葉が含まれているのでライオンのキャラクターです。Riccardo Spagniは「FluffyPony」というポニーのキャラクター、WhalePandaは「WhalePanda」というパンダのキャラクター、そしてCharlie Leeは「Chikun」という鶏のキャラクターです。
2019年、ニューヨークにいた我々は、当時のコンセンサスやその方向性に満足いかなかったため、カンファレンスを行うべきだと思い立ちました。そこで我々は、BitcoinにフォーカスしたMCCカンファレンスというカンファレンスを立ち上げました。一番直近で行ったカンファレンスは、2020年9月25日~26日のMCCVRカンファレンスです。
プライバシー強化がメンバーの共通点
Magical Crypto Friendsは決してマキシマリストなポッドキャストではありません。Charlie Leeは自分のコインであるLitecoinを持っていますし、RiccardoはMoneroの主力的な保有者です。WhalePandaはBitcoinerですが、彼は常にアルトコインの取引もしています。
我々は全く異なる背景や見解を持っていますが、4人に共通しているのは、プライバシーを非常に重視しているという点だと思います。我々はプライバシーに強い信仰を抱いていて、プライバシーの強化に関する様々なことに関わっています。
たとえば、BlockstreamのLiquidネットワークはプライバシーを強化する技術で、秘匿トランザクションを行ったり秘匿資産を管理したりすることができます。Moneroにいたっては、プライバシーを確保するという前提の上に成り立っているので、全てがプライバシーに関することばかりです。Litecoinについては、プライバシー機能を強化するためにMimbleWimble Extension Blocks(MWEB)というものがあり、Charlieがこれに取り組んでいます。
このように我々は、プライバシーを守る技術を増やすために色々と尽力しているというわけです。
全員が動物のキャラクターに
動物のマスコットを使うというのは私のアイデアです。これには他のポッドキャスト番組との差別化を図るという意図があります。
「Spirit Animals:スピリットアニマル」というものがありますが、その動物を漫画のようにキュートでハッピーなマスコットにしたら、きっと楽しいと思いました。番組を楽しいものにしたいという思いから、ホームページもピンク色で楽しげなものになっています。この辺りが他のポッドキャスト番組と一線を画しているところだと思います。
そしてもう1つの違いは、我々の番組は一般的なポッドキャスト番組とは異なり、気が向いた時にエピソードを配信しているだけなので、仕事というよりは趣味のようなものであるという点です。
3人の仲間と一緒にポッドキャストをすることができたのは、私にとって本当に素晴らしいこです。仲間の3人は、皆違う性格をしています。
Charlieはとてもクールで、感情的になることはありません。とても几帳面で、論理的で、冷静に考えたり推論したりするタイプです。
WhalePandaは興奮しやすく、とても楽しい人です。冗談を言うのが好きで、いつも明るい雰囲気を醸し出しています。
Riccardoについては、彼は俳優になるべきだったと思います。彼はユーモアのセンスが抜群で、面白いジョークをたくさん言ってくれます。
FOMOとハイパー・ビットコイン化とは
Bitcoinの対法定通貨価格は今後も上昇を続けると思います。そして最終的に何が起こるかというと、他の強気相場の場合と全く同じように、ある地点で人々の間に、FOMO(Fear of Missing Out:取り残されることへの恐怖)というものが訪れます。そうすると需要のグラフが最も高いポイントに到達するのです。
しかし興味深いのは、この後に一体何が起こるのかということです。Bitcoin界隈の人々はFOMOの後に訪れる現象のことをよくハイパー・ビットコイン化(Hyper-Bitcoinization)と呼びます。
ハイパー・ビットコイン化とは、循環経済でBitcoinを稼いで使うことができるようになり、Bitcoinをドルに戻すことをしなくてもなくなる、ということです。これはつまり発展の最終段階であり、あらゆるものの価格がBitcoinで決定されてドルや円への変換が一切不要になった世界です。
国家がBitcoinを買うとどうなるか
Bitcoinを最初に導入した国は、おそらく非常に裕福になるでしょう。今日では、Bitcoin建てで資産を積み立てて保有している企業もあります。もしも国が同じことを始めれば、その時Bitcoinの価格は大きく上昇するでしょう。
たとえばBitcoinを大量購入して蓄積したり、Bitcoinをマイニングするような国家が出てきたら、その国家はもう決して他の国々の追随をゆるさないでしょう。
しかしBitcoinの供給の大部分は、最初にBitcoin業界に参入してくる5~10つの企業によってすぐに独占されてしまうでしょう。国家は残りのBitcoinを、どうにかして少しでも多く獲得しようとしなければいけないというわけです。
Bitcoinの世界を開拓していく人々
私は、他の人が執筆したBitcoinに関する文章を読むのが大好きです。たとえば、Bitcoinが社会にもたらす可能性のある変化という部分に関しては、興味深い視点にたくさん触れることができます。
また、様々な人々がBitcoinの世界を開拓していく様子には、目を見張るものがあって大変魅力的です。たとえばマイケル・セーラー氏は、ゼロの地点からスタートして、数週間でBitcoinの達人の域まで上り詰めました。この変化を目の当たりにしたことは、私にとって大変面白い経験でした。
社会におけるこのような変化は、これから先もっと出てくると思います。そしてこのような変化にともない、より多くの人々がBitcoinの重要さに気づき理解するようになってくると思います。
詐欺に対しては詐欺であると主張すること
もしもやり直す機会があるのであれば、匿名の人になりたいと思います。しかし時すでに遅しです。初めてBitcoinの界隈に入ったとき、この界隈というのはまだ狭かったのでそこまで深く考えていませんでした。
ところがBTCChinaに自分の名前が結びついてしまったので、そこからBitcoinerとして知られるようになってしまったというだけのことです。自分のことをBitcoin至上主義者(マキシマリスト)だとは思っていません。というのも、私はたとえBitcoin以外のプロジェクトであっても、それが詐欺でなければ受け入れるからです。しかし残念ながら、そういうものはほとんど詐欺だという現状があります。
世の中の多くのものは詐欺なので、私はそういうものに対してははっきりと詐欺だと言っています。もしもはっきり言わなければ詐欺を可能にしてしまうからです。
しかし超えてはならない一線というものが存在しますので、我々4人はその一線を超えないようにしています。我々は決して個人を追求して攻撃したりはしません。詐欺については、通常は冗談を言ったり非難したりするのにとどめています。
ゲーム業界について
私は最近はあまりゲームで遊ぶ時間がとれていませんが、実は筋金入りのゲーマーです。ゲームというのは非常に興味深いメディアです。ゲームは映画のようにインタラクティブなメディア、つまり対話型のメディアだといえます。
また、ゲームには社会的なダイナミックさもあります。さらに経済的な側面もあります。だからこそ、ゲームと暗号通貨市場の統合には大きな影響力があります。そして我々が必ず考慮しなければならないのは、ゲーマーは暗号通貨やセカンダリーマーケットに精通しているという事実です。
ゲームプラットフォームと暗号資産
MintGoxというプロジェクトの興味深い特徴は、ライトニングネットワークを使ってプレイヤーにBitcoinで報酬を与えようとしているという試みです。これは本当によい試みだと思っています。こういった意味でも、今後のMintGoxの成長に期待しています。
しかし多くのゲームプラットフォームは、暗号資産を活用できているとは到底言い難いです。中にはブロックチェーンゲームと銘打っているゲームもありますが、それが一体何を意味しているのか、よくわからないということが多々あります。
あたかもプレーヤーがゲームの中の資産を実際に所有できるかのように宣伝しているゲームもありますが、利用規約をよく読めば実際に資産を所有しているのはゲーム提供者だということが分かります。
ですので、開発者がゲームをシャットダウンすれば、最終的には全ての財産は消えてなかったことになってしまいます。したがってブロックチェーン上のゲーム資産を「プレーヤーに真の所有権がある」としてマーケティングするのは詐欺的なのではと思っています。
PixelmaticとInfinite Fleetについて
Pixelmaticは2011年に設立したゲーム開発会社です。モバイルゲームの開発とモバイルタイトルのライセンス供与というところからスタートし、Vaingloryと呼ばれるMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)の技術運営を行ってきました。
Pixelmaticのチームは世界中に分散していて、数百万ドル規模の高評価AAAのフランチャイズから、トップグロスのソーシャルゲームまで、幅広い業務経験を持っています。これまでには、Company of Heroes、Dawn of War、Age of Empires、Mass Effectといった数々のゲームを手がけてきました。
そして我々は、他のゲームを運営するのではなく自分たちだけのゲームを作りたいと考えました。これがインフィニット・フリートの始まりです。
Infinite Fleet(インフィニット・フリート)というのは、デュアルトークンモデルを採用した多人数同時参加型オンライン(MMO)ストラテジーゲームです。Pixelmatic社が開発して、Exordium社が発売しているゲームになります。
デュアルトークンモデルというのは、ゲーム内に資本を調達するためのセキュリティトークン(EXO)と、ユーティリティトークン(INF)どちらも持つということを意味します。
ユーティリティトークン(INF)は購入制ではなく、ゲームをプレイすることで獲得されます。我々は、暗号資産がより主流となれるような方法をもっと推し進めていきたいと思っております。そしてINFは我々の目的を達成できると考えています。
インフィニット・フリートはベテランの開発者チームを要する主力的存在のゲームです。我々が提供するものはEVEやStarCraft、Star Citizenといった数々の名ゲームに匹敵するものです。
仕事でもあり、趣味でもあるインフィニット・フリート
昔は根っからのゲーマーで、Starcraft、Warcraft 3、Diablo 2といった数々のゲームをプレイしていました。Lineage 2というゲームにいたっては、私のグループがサーバー全体を支配しているほどでした。
最近では、趣味とインフィニット・フリートの開発が一緒になってきています。私はインフィニット・フリートの世界を構築することを大変楽しんでいますし、細部までこだわりぬいた世界をつくるために、努力しています。
そして常に、インフィニット・フリートの世界でストーリーやテクノロジーがどのように機能するかといったことについて考えています。。
私はライターのチームと一緒に仕事をしていますが、フィクションの細部や、科学的な部分に多くの時間を費やしています。多くのSFゲームやテレビ番組などには、この点が欠けていると思いますので、インフィニット・フリートではここを特に強化していきたいのです。
ゲームのプレイヤーは自分のGuild:ギルド(オンラインゲームでいうところのゲーマー集団)のためにマルチシグネチャーのウォレットを作り、そのウォレットにINFを貯めておくことができます。
我々の技術は、これからも様々な興味深いことをもたらしていくと思っています。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
【免責事項】
本ウェブサイトに掲載される記事は、情報提供を目的としたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。また、本記事は執筆者の個人的見解であり、BTCボックス株式会社の公式見解を示すものではございません。