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「クリプト界は毎日がドラマ」CoinGecko 共同創設者 ボビー・オン氏 ④

暗号通貨のデータを収集し、様々な角度から市場分析を行っているCoinGecko(コインゲッコー)共同創設者のボビー・オンにインタビューさせていただきました。是非、ご覧ください。

ボビー・オン(コインゲッコー:共同創設者)

インタビュー日 : 2020年2月25日

株よりもBitcoinを好む若者

最初、暗号通貨はあまり銀行に理解されていませんでした。Bitcoinの最初のユーザーは、ほぼ全てが麻薬密売人やマネーロンダリングを行う者であるという、かなり悪い報道から始まったため、銀行はあまり関与したくありませんでした。最初に目に付くのは、シルクロードのように犯罪者がダークウェブでドラッグを買うために使用されているという記事ばかりでした。その見出しを銀行の人々が読み、暗号通貨は悪という認識が広まったので、銀行がそれを断ち切るという状況が数年間続きました。しかし、銀行がブロックチェーン技術とBitcoinの可能性を理解するようになり、最近の彼らの認識は変わってきたと思います。将来的に銀行がBitcoinやブロックチェーン技術と結びつき、カストディ・プロバイダーとなるのは時間の問題だと思います。

銀行が法定通貨を保管できるのであれば、暗号通貨も可能ではないでしょうか。銀行は全てを安全に保管できる最も信頼できる機関と言われていますし、彼らは新しい形の収益モデルを検討し始めたばかりだと思います。一般的に若者はそれほど株式の取引を行っておらず、多くの若者にとってBitcoin取引は株式取引と比べて非常に簡単です。今後、銀行にとっては暗号通貨取引所を買収するか、業界に直接参入するか以外の選択肢はないと思います。

このような動きは既に始まっていて、ドイツでは銀行が暗号通貨のカストディソリューションを提供し、Bitcoinを顧客に直接販売することが許可されています。なので、銀行にとって暗号通貨がグローバルな機能となるのは時間の問題だと思います。銀行が顧客にゴールドの販売サービスを提供できるのなら、Bitcoinも同様だと思います。顧客がBitcoinを取引したいのであれば、そこから新たな収益が得られるので、銀行がそれを受け入れていくのは理にかなっていることだと考えます。

暗号通貨のこれから

2019年は暗号通貨市場が40%も拡大し、主にBitcoinがリードした年でした。Bitcoinの時価総額の増加率は約95%でしたが、他のコインがあまりうまくいっていなかったこともあり、Bitcoinのドミナンスが増加していきました。取引所トークンは非常にうまくいっていました。 

2020年の主要なイベントを見てみると、ETH 2.0のリリースは非常に大きなものだと思います。また、現在、中国では中央銀行のデジタル通貨が発行されることとなり、お金が常に再定義され、流動的になっていると言えます。暗号通貨だけでなく、中央銀行、民間銀行、ハイテク企業などによっても、お金が定義されようとしています。未来のお金がどのようなものになるかついて誰もが違う意見を持っており、独自の視点と分散性の違いが各々にあります。最終的にどうなるかはわかりませんが、社会のあらゆる場所で、これら全ての実験を目の当たりにできるのは非常に興味深いことだと思います。

暗号通貨の世界に存在するトークンの数は、時間とともに増加すると考えています。トークン化が可能なものは、全てトークンに変わっていく未来を考えると、金融を再編成する数十年の革命の幕開けと言っても過言ではないと思います。多くの実験が試され、数多くのプロジェクトが始動しているのを、私達は目の当たりにしています。一部では過剰な資金調達が行われ、多くのプロジェクトが他のスタートアップと同様に消滅してしまうでしょう。ただ、ブロックチェーンと従来の市場の唯一の違いは、これらのトークンが公の場所で取引されているところです。お金を多く稼ぐ人もいれば、失う人もいますが、暗号通貨が産業として成長するにつれて、より多くのトークンが発行され、より新しいものが生まれてくると思います。

ハッキングと技術の進歩

他の新しいテクノロジーと同様に、Bitcoinにもリスクが伴います。ウォレットを安全に実装しなければ、ハッキングが行われるという最大のリスクになります。セキュリティを確保するためには、適切な手段を見つける必要があります。Bitcoinと従来の送金方法の違いは、その不可逆性です。誰かがあなたのウォレットをハッキングしてコインを奪うと、泣き寝入りするしかありません。そのコインと資産を完全に失うこと、これが銀行が恐れている最大のリスクです。

どのような商品を扱っているのかを先に理解する必要があり、システムの安全性を確保するための適切なプロバイダーが必要です。ただし、全てのトランザクションはブロックチェーンに記録されます。そして、今は捕まえることができないかもしれませんが、行われたトランザクションは永久的に記録され、5年後、10年後の近い将来に技術が追いつき、彼らは捕まえられるかもしれません。したがって、暗号通貨はマネーロンダリングには適しておらず、ダークウェブでドラッグを購入するのも良い考えではないと思います。

透明性が非常に重要であり、多くの取引所が透明性を高めるために独自の基盤を開発しています。EthereumにEthereum財団があるように、内部でどのような意思決定が行われ、どのように維持していくかということは、コミュニティ全体の利益のために透明化されるべきです。コミュニティと議論を行わずして何かを作り上げることはできません。それができなければ、信頼を構築できず、エコシステムは消滅してしまうと思います。

スケーラビリティの向上

サイドチェーンは確かに素晴らしい発明だと思います。Ethereumのようなシステムが完全に詰まってしまっている場合、ある程度のトランザクション数しか一度に処理できなくなってしまうので、TPS(1秒当たりのトランザクション処理件数)を増やしていく必要があります。そうしなければ、ネットワークはスケーリングできません。Ethereumは、トランザクションを高速に処理できるワールド・コンピューターを目指しているので、サイドチェーンのような方法を活用してスケーリングさせる必要があります。

Bitcoinは、1秒あたり約7トランザクション、Ethereumは約15トランザクションしか処理できません。 1つの分散アプリケーションが広く普及すると、ユーザーが増加し、ネットワーク全体が混雑してしまいます。例えば、Ethereumのチェーンで1つのトランザクションを生成するのに5分以上待つ必要があったり、Bitcoinの承認に1時間以上も待たなければならない場合があります。決済や取引のためには、トランザクションの承認作業が可能な限り速く行われた方が良いのです。スケーラビリティでは、ブロックチェーンが1秒あたりに処理できるトランザクションの数を増やすことが目標とされており、そのための方法がいくつか存在しています。

クリプト界は毎日がドラマ

暗号通貨の業界は非常に速く動いているので、今から数年後に何が起こるかを予測することは非常に困難です。暗号通貨の中のストーリーは6か月ごとに完全に変化し、常に新しいものが生まれ続けています。1年半前はNFT(非代替トークン)が注目を集めていましたが、現在はそうでもなくなっています。今後2、3年は落ち着いたままだと思いますが、恐らくその数年後には、もう一度流行り始めると思います。同様に、以前はBitcoinのLightning Networkについて皆が話していましたが、今では多くの人が話をしなくなりました。しかし、Lightning Networkにも再び人気が集まり、最もクールな存在となるかもしれません。状況が非常に急速に変化しているので、CoinGeckoはその変化に合わせて、今後のデータを集約していく必要があると思います。

特に注目している分野は、DeFi(分散型金融)とデリバティブで、 2019年にはこれらのトピックに多くの時間を費やしました。DeFiの調査では、それをどのようにシステムに組み込むことができるかという部分を積極的に見ています。 2019年のような急速な成長は、2020年も続いていくと思います。急速な成長に伴い、システムが更に複雑になっていくので、複雑になりすぎる前にしっかりと把握しておくことが必要です。DeFiの急速な成長はBitcoinの始まりの過程に似ています。当時はBitcoinだけについて学べばよかったのですが、今はEthereumや、その他多くコインについて学ぶ必要があります。なので、今は暗号通貨の世界で起こっている全ての出来事に追いつくことは不可能に近いと思います。

暗号通貨のエコシステムは毎日がドラマで溢れ、常に様々なことが行われています。誰もが自分の考えやアイデアが最高であるという自信を持っているので、お互いに論争が起こることもあります。今となっては何が起きても驚きはなく、それが普通になってしまいましたが、もし逆に何の論争も起こらなくなってしまえば、ドラマはなくなり、非常に退屈なものになってしまうと思います。

ヤモリのマスコットキャラクター

ヤモリは小さくて愛らしい生き物なので、CoinGeckoのロゴとして選びました。暗号通貨の業界が真面目な名前とプラットフォームで溢れているのとは対照的に、私達が欲しかったのは可愛らしいものでした。金融の世界が真面目な雰囲気である必要はなく、楽しむことが私達の目標です。マスコットが可愛いからといって、そのサイトのデータが信頼できないというわけではありません。また、多くの日本企業には独自の可愛いキャラクターがいるので、日本文化にもアピールできるのではと思いました。私達のモットーは今も昔も変わらず、最も正確なデータプロバイダーであり、暗号通貨市場の状況を360度から提供することです。

最後のメッセージ

皆さん、こんにちは。 是非、CoinGeckoをチェックしてみて下さい。まだ、 CoinGeckoで提供されていないサービスがあれば、メールを頂ければと思います。頂いたメールは、必ずチェックしています。

   

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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