JPモルガンの元アナリストであり、ビットコイン・マキシマリストとしても知られる著名トレーダーのトーン・ベイズ氏(Tone Vays)にインタビューさせていただきました。第2回のインタビュー記事では、暗号通貨市場を動かすプレーヤーについてお話ししていただきました。
トーン・ベイズ氏
インタビュー日 : 2020年7月14日
機能しないトークンのビジネスモデル
現在、私が関心を持っている暗号通貨はBitcoinだけで、他の暗号通貨はあまり役に立たないと思っています。
トークンが取引所で公然と取引されているにもかかわらず、通貨の機能としてトークンが使用されているような場合、そのトークンは詐欺だと思っています。取引の途中で変動する通貨をなどありえませんので、このようなビジネスモデルは全く意味をなしません。
トークンが変動するとはどういうことか
もしこのようなビジネスモデルが成り立つのであれば、NetflixにNetflixの株で支払いをしてもいいということになります。e-bayにはe-bayの株で支払い、AmazonにはAmazonの株やAmazonの通貨を支払って買い物をしてもいいことになります。
安定した価値を持たないユーティリティー・トークンを使用する目的は、自分のためにお金を刷って投資のプロではない人々に売るためです。このようなビジネスモデルは、投資家を守るために長い間改良されつづけてきた多くの証券のルールを破っています。
ここで重要なのは、こういったビジネスモデルのプロジェクトを行っているのは、すべて企業である点です。こういった企業はサーバーを中央集権で管理していて、まるで分散化されていないのです。
Bitcoinの重要な指標
少人数の人に利益をもたらすことだけを目的としているようなトークンもある中、私が唯一評価し続けているのはBitcoinです。
私は、Lightning NetworkやLiquidサイドチェーンといったBitcoinの上に構築、統合されている技術、そしてハッシュレートを指標として見ています。
ハッシュレートは新たな最大値に達しました。これはつまり、Bitcoinを取得するために必要な電力はこれまでになく高くなっているということです。このような傾向は、Bitcoinが問題なく機能していることを保証するポジティブな指標です。
それから、Bitcoinのネットワークは決してダウンしません。過去5〜6年間、1秒もダウンしたことはありません。トランザクションは常に高速であるとは限りませんし、常にプライベートであるとも限らないですが、常に実行されています。
こういった点は私が本当に気にしている指標です。このような指標をみているので、Bitcoinに対する信頼は増すばかりです。
市場を大きく動かすプレーヤー
暗号通貨界隈において、その発言だけで市場に影響を与えられるような人がいるとは思いません。たとえ影響を与えられたとしても、一時的なものに過ぎません。それほどの影響力を持つ人はいないと思います。また、前にも言った通り、Bitcoinとそれ以外の暗号通貨は分けて考える必要があります。
Bitcoinの市場に影響を与えられる人はいませんが、Bitcoinを大量に保有している人が実際にそのBitcoinを売ったり、お金をたくさん持っている人がBitcoinを買えば、価格が変動します。
このことは一般的に市場操作と呼ばれますが、個人的には、ただ単にお金やBitcoinをたくさんもっている人が市場を動かすことに対して、「操作」という表現は使いたくないと思っています。
私は自由市場を信じているので、Bitcoinをたくさん持っていれば価格を動かせるというただそれだけのことだと思います。
もしもBitcoinを売りたいのであれば、市場により大きなプレイヤーが存在する可能性もあるため、自分に制限をかけず賭けに出るべきです。米ドル市場でも同じことが言えます。
また、例えばBitcoin市場に参入したい億万長者が、100万ドルを投げうってすぐにBitcoinを購入しようとすれば、相場が上昇します。これもまた素晴らしいことだと思います。
しかし、Bitcoin以外の他の暗号通貨に関して言えば、市場に多大な影響力を持つ個人または団体が存在します。例えば大手アルトコイン企業のCEOが何か発言すれば市場は動きます。
したがって、どの暗号通貨の市場も、カリスマ的リーダーの影響を受けやすくなっています。しかし、Bitcoinに関して言えば、私は自由市場を信じており、圧倒的な影響力を持つ人物は存在しないと思います。
Bitcoinマーケットとポーカーゲーム
クジラ(大量のBitcoinを保有する人物)が大規模なトランザクションを実行する場合、市場が影響を受けることは確かですが、ルールに従って行動している限りは、全く悪質だとは思いません。
ただし、取引所がユーザーに対する価格を変更している場合、それは操作であり、おそらく犯罪にもなります。取引所がクジラに情報を提供し、市場での立場を有利にするようなことも操作です。
こういった違反行為は規制当局が防ぐべきものです。しかし、クジラが私と同じルールのもと市場でプレーしている限りは、クジラの方がより多くの資本をもっているから価格を上げているという、ただそれだけのことです。
原理はポーカーゲームと同じです。テーブルに座りポーカーをする時は、一定のお金を、チップという形で保有しています。もしも同じテーブルに10倍多くのチップを持っている人がいた場合、そのプレーヤーはテーブルの他のプレーヤーの方向性を自分の都合の良いように変えることができるし、その権利があります。
そういうプレーヤーがいたら、テーブルから立ち去るという選択もとれます。または、チップを多くもっているプレーヤーが有利であることを認めつつも、プレイを続行することもできます。
もしくは、自分の方がいいプレーヤーだと思うのであれば、チップの多いプレーヤーからチップを奪うべくプレイするという手もあります。
もしも敵に手持ちのカードの中身を知られると、公正なゲームではなくなってしまいますが、全員が同じルールでプレイしている限りは公正なゲームなのです。
2020年のBitcoinの動き
2020年の初めに、私自身の暗号通貨とBitcoinの予想についてのブログ記事を書きました。今年の1月の第1週に、「半減期の前に5000ドル前後まで大暴落する」と予想し、まさにその通りになりました。
Bitcoinの存在意義は並外れて大きいですが、同時に過大評価されているため、Bitcoinの価格をつり上げることは非常に難しいです。Bitcoinの優位性はそのうちもう少し上昇すると予測していますが、多くの人々がアルトコインを購入し、詐欺プロジェクトに手を出してしまっています。
中国では、Bitcoinを大量に騙し取る大規模なネズミ講の詐欺があったように、依然としてBitcoinの需要が非常に高く、狙われやすい状況です。
私の所有物で一番価値があるものはBitcoinです。他のものは割とどうでもよくて、例えば銀行口座をハッキングされたりペイパルアカウントをハッキングされたりしてもそこまで気にしないと思います。
もちろんハッキングされないことが一番ですが、もし仮にそういった被害にあったとしても、銀行のシステムがあるので、とられたお金を取り戻すことができるはずです。しかし資産の中でも唯一、Bitcoinはとられてしまうと取り戻せません。だから私は自分のBitcoinを守りたいのです。
クリプトアーティスト「ヴェサ・キヴィネン」
クリプトアーティストとして知られるヴェサ・キヴィネン氏は大変素晴らしい人物です。ヴェサ氏の絵が展示されているイベントで彼に会いました。絵は3つの作品で構成されていて、そのうち企業ロゴ入りの2つの作品はイベント中にすでに売れてしまいました。
残りの一つは何もロゴが入っていない作品で、私も非常に欲しいと思いましたが、結局Bitcoinを手放すことができず、買いませんでした。
その後、我々はヴェサ氏にお願いして、「Unconfiscatable Conferene」というカンファレンスのために絵を作成していただきました。彼はこのカンファレンスの本質を理解するために、私に長時間にわたるインタビューをしました。そこから先は、彼のもつビジョンと創造性に全てを任せました。
彼は立派な仕事をしてくれて、この上なく素晴らしい一枚の絵が完成しました。そしてその絵にカンファレンスのスピーカーたちが署名し、絵をオークションに出したところ、私の友人の一人が落札しました。
ヴェサ氏のしていることは素晴らしいと感じます。彼は自分の絵をBitcoinと引き換えに売ることが大好きです。Bitcoinを得るのは難しく、人々にBitcoinを手放してもらうためには、皆が本当に欲しがるものを提供する必要があります。
ヴェサ氏がBitcoinを稼ぐ手段は、自身の作品をBitcoinで販売することです。
これは最善の手段ではないのかもしれませんが、それでも彼は現代で最も有名なクリプト・アーティストの三本指に入る実力者だと思います。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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