投資アナリストとして人気を集めるリン・オールデン氏(Lyn Alden)に、現在のマーケットについてお話を伺いました。オールデン氏が毎週執筆するニュースレターは多くの投資家に読まれ、彼女を暗号通貨業界でも一躍有名にしました。今回は、暗号通貨におけるマクロ分析の重要性などについてインタビューしました。ぜひご覧ください。
リン・オールデン氏
インタビュー日 : 2020年10月13日
Lyn Alden投資戦略サイトを運営しているリン・オールデンと申します。私はBitcoinだけを専門としてきたわけではないのですが、株式や債券、貴金属などを含む幅広い資産クラスを専門としていて、中にはBitcoinも含まれます。こういった様々な異なる資産クラスに対しての私のアプローチは、価値と成長の可能性がどこにあるのかを研究して見つけることです。私がBitcoinの記事を配信し始めたきっかけも、このアプローチの一環です。
私は2017年から、暗号通貨界隈で積極的に活動するようになりました。2020年の4月には、暗号通貨に対してかなり強気な姿勢をとるようになりました。
私は個人投資家と機関投資家の両方にリサーチを提供しています。記事と、無料のニュースレターを読者に提供しています。それから有料のプレミアム記事もあって、だいたい2週間に一度のペースで公開しています。
私は、マクロ分析と企業の個別分析を組み合わせて様々な要因を見ています。たとえば、失業率、流動性、財政刺激策などは、様々な資産を動かす主な要因になります。私は個別の企業を詳しくみて、マクロな背景を分析し、そして個々の投資と組み合わせます。
はじめて暗号通貨に出会ったのはいつですか?
Bitcoinの存在を知ったのは2011年のことです。自分のコンピュータを使ってマイニングをしている友人がいたのがきっかけです。当時は、とても需要のある素晴らしい技術だとは思いましたが、詳しい知識を学習したわけではありませんでした。
ただとても斬新に思いましたし、素敵な技術だと感じました。当時は残念ながらBitcoinを買わなかったのですが、その後も毎年、欠かさずに何回もチェックをし続けていました。
私がBitcoinを取り上げるようになったのは、2017年になって相場が急上昇してメディアでも注目されるようになってからです。私は読者から、Bitcoinを記事で取り上げて欲しいという多くのメールを受け取りました。
そしてBitcoinに関する最初の記事を書いていた際に、その価格は6000ドルから8000ドルになりました。
私はいくつかの異なる視点からBitcoinを分析しました。1つは交換の媒介として見ること、そしてもう1つは、価値の保存手段としてみることです。
Bitcoinは交換媒介としてはいささか過大評価されているようにも感じますが、価値の保存手段としては、かなり面白いものであると判断しました。
分析をはじめたのはいつですか?
はじめは、Bitcoinが買われすぎていたことと、熱気がありすぎたことから、とくにポジションも取らず、目先は弱気な見方をしていました。そしたら20,000ドルまで急上昇した後、4000ドル以下に暴落しました。
また、2020年の3月に他の資産も値下がりしましたが、再び5000ドル以下まで反発し、約1ヶ月後には6000~7000ドル台に戻っていたので、そこから分析を始めました。
その後、マクロ的な要素がだいぶ良くなり、低金利や大規模な不換紙幣の増発などもあり状況が変わりました。
Bitcoinが2020年5月に半減期を迎えようとしていたので、Bitcoinの半減サイクルをもう少し調べて、Bitcoinの価格スキームがどのようになっているのかを見てみました。
今では、半減期の開始から2年後には強気のトレンドがあり、半減期の2年前にはBitcoinは調整局面になる傾向があることがわかっています。
したがって、Bitcoinがうまくいって上がる時期とそうでない時期があります。私は今回、今まで以上に強気の予想をしていますので、Bitcoinをおすすめしていますし、自分も予想に従って動こうと思っています。
始める前に知っておくべきこと
私は工学の学位を持っているので一般的には技術的な観点から物事を見ています。コーディングをしたこともありますが、あまり得意ではないので、Bitcoinのソフトウェアを実際にみてみたことはありません。
私としては、技術者以外の人が押さえておくべき技術的なポイントというのは、技術がどのように機能するかについての、中心となるアイデアの部分だと思います。
たとえば、暗号化の仕組み、ブロックチェーンの仕組み、P2Pシステムの仕組み、発行上限が2,100万に制限されている理由、使用しているコンセンサスメカニズムなどの主要な機能を変更するにはどうすればいいか、などは押さえておくべきだと考えます。
技術者でなくても、この資産を理解するためには、技術的な側面を十分に理解する必要があるのです。
違う視点からみてみること
2017年の私の仕事の一部は、ハードフォークについて詳細を把握することでした。Bitcoinは何度か厳しい時期を経験したので、もしかしたら他の暗号通貨との競争で負け、市場シェアを失っているのではないかと懸念していました。
実際他の様々な暗号通貨に追い抜かれて、Bitcoinの市場シェアは40%台に落ち込んでいました。どの暗号通貨も希少性があり、そのコンセンサスプロトコルの方法に基づいて一定数しか存在できないにもかかわらず、誰でも新しい暗号通貨を作ることができます。
私は「もしも様々なコインが互いに価値を弱めあってしまったらどうしよう」とか、「市場シェアやネットワーク効果が最も大きいコインが一つもなかったり、個々のコインの価値が上がらなかったりしたらどうしよう」といったようなことを考えて心配していました。
ハードフォークの時に特に、ブロックサイズに関しての議論や、メリットとデメリットの議論など、あらゆる点で賛否両論の議論が繰り広げられました。私はただ静観するだけでしたが、最終的には議論が合意をむかえ、結論が出されました。
私は、あるブロックサイズが他のサイズよりも優れている理由を、外部の視点から、技術的に研究してきました。そしてBitcoinは、たとえ何千もの他の暗号通貨が作られたとしても、価値を維持するのに十分なネットワーク効果があると確信しました。
そしてBitcoinは、ハードフォークをはじめとする数多くの窮地をくぐりぬけました。Bitcoinはセキュリティ、ハッシュレート、シンプルさ、分散化など、私たちが求めているすべての重要な要素を備えています。
技術者以外の人たちにとって、自分たちが何に取り組もうとしているのかを確実に知るためには、まずは技術的な側面について十分に学ぶ、というアプローチをとらなければいけません。
デジタルゴールドとしてのBitcoin
「ソフトウェアが世界を飲み込む:Software Is Eating The World」 という有名な言い回しがありますが、ソフトウェアはある業界から来て別の業界に行き、業界の現状がどうであれ侵食し続けます。
それと同じように、Bitcoinもある意味ではゴールドをデジタル化した、お金を浸食するソフトウェアです。高い携帯性、没収しにくい性質、検証の容易さ、安価な取引コストなど、ゴールドよりも有利な点がいくつもある、貴重なデジタル資源だと言えます。
Bitcoinのマクロ要因を理解するには、不換紙幣と比較するのがいいと思います。たとえば銀行にお金を預けて、価値を維持しつつ、プラスの金利で価値を高めることができるのであれば、そのお金をやめて、代わりにゴールドやBitcoinを保有するインセンティブは低くなるでしょう。
銀行に預けているお金に何が起こっているのか
歴史的にみると通貨の切り下げが起きていて、政府がお金を印刷したり、金利がインフレ率を下回る期間が長く続くと、時間の経過とともにゆっくりと富が削られていきます。
このように、不換紙幣が切り下げられている時期においては、希少価値の高い資産が非常に良いパフォーマンスをします。
したがって、金や銀でも、株式や不動産でも、あるいはBitcoinでも、いずれの資産を考える場合でも、不換紙幣の切り下げの歴史を振り返り、なぜ特定の時期に切り下げが起こりやすいのか、起こる時期と起こらない時期の違いを知ることが重要だと思います。
たとえば、ここ10年間の間だけで大幅な通貨切り下げがあったのはどうしてかを知ることで、たくさんのことが見えてきます。
実質金利と名目金利の違いを理解し、金利単体でみるのではなく、金利とインフレ率の関係をみていくことで、銀行に預けている預金に、実際何が起こっているのかを知ることができます。
私の保有するソブリン債に何が起きているのかも分かるし、他の資産もみれば、なぜゴールドとBitcoinがこの環境で伸びていけるのか、知ることができるでしょう。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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